ふたば便り

民法(相続関連)改正のポイント~遺産分割等に関する見直し

2018年10月号(Vol.194

 今年7月に約40年ぶりに行われた民法(相続関連)改正のポイントのうち、先月取り上げた「配偶者の居住権」に続いて、今月は遺産分割等に関する見直しについて概要をご説明します。

夫婦間の自宅の贈与等の保護

(公布日(平成30年7月13日)から1年以内に施行)

 これまで、20年以上連れ添った配偶者である妻又は夫(相続人)に、夫又は妻(被相続人)が所有する家を遺贈又は生前贈与していた場合、原則として配偶者が遺産の先渡しを受けたものとして取り扱うため、その家を遺産分割の対象に含めなければならず、結果的に配偶者の取得財産が減り、「残された配偶者の老後の生活保障」を願う被相続人の意思が反映されない可能性がありました。

 今回の改正では、婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の遺贈又は贈与については、原則として、遺産の先渡しを受けたものとして取り扱わなくてよいこととされたため、残された配偶者は遺産分割の際に、より多くの財産を取得できるようになります。

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【預貯金債権の仮払い制度

(公布日(平成30年7月13日)から1年以内に施行)

 従来は、遺産分割前の被相続人の預貯金口座は凍結され、払戻しには相続人全員の同意が必要でした。その結果、遺族の生活費や葬儀費用、債務の支払い等、差し当っての資金が引き出せないという可能性がありました。そのため、今回の改正では遺産分割前でも相続人が預貯金の払戻しが受けられる、次の2つの仮払い制度が設けられました。

(1)家庭裁判所の保全処分の要件緩和

 仮払いの必要性があると認められる場合には、他の共同相続人の利益を害しない限り、家庭裁判所の判断で仮払いが認められるようになります(預貯金債権の仮分割の仮処分についての要件緩和)。

(2)家庭裁判所の判断を経ずに払戻しが得られる制度の創設

 預貯金債権の一定割合については、金融機関の窓口で、他の共同相続人の同意がなくても単独で払戻しが受けられるようになります。但し、口座ごとに次の金額の範囲内に限られます。

 単独で払戻しをすることができる額=(相続開始時の預貯金債権の額)×(3分の1)

                 ×(当該払戻しを求める共同相続人の法定相続分)

           ※同一の金融機関に対する権利行使は,法務省令で定める額が限度とされます。

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