西俊輔の「毎日楽しく」

2017年9月号(Vol.145)

 先日、新千歳空港を出発して大阪の伊丹空港に向かう飛行機の中で起きたあるエピソードに感動してしまいました。ご存知の方も多いでしょうけど、ご紹介しましょう。

 札幌の新千歳空港というところは乗客数が多いことで有名な空港なんですが、8月のこの日はお盆や夏休みも重なっていつも以上に混雑していたそうです。そのため、乗客のみなさんがいったん飛行機には乗りこんだものの、空港が混雑していたため、そのまま離陸できずに1時間も過ぎてしまい、なんとなく機内の雰囲気がピリピリしたものになっていたところ、あるシンガーソングライターが立ち上がり、機長とCAさんの許可をもらって、なんと、機内アナウンス用のマイクでご自身の持ち歌の一部を歌って、その場の雰囲気を和ませたという話です。そのシンガーソングライターというのが松山千春さんでした。歌ったのは「大空と大地の中で」という歌です。北海道出身の松山さんは北海道愛が深いことでも有名な方ですが、この歌も北海道をイメージさせる有名な曲です。イラだつ人も出て機内の雰囲気が悪くなる中、なにか自分にできることはないかと、いてもたってもいられなくなったそうで、実際、松山さんが歌い終わったとき機内では拍手喝采が起き、機内の雰囲気が一変したそうです。乗客のみなさんにとっては逆にいい思い出になったことでしょうね。お忙しい中、ご自身だって1時間も遅れてイライラしていたかもしれませんが、こうした行動を取った松山さんはなんて粋で素敵な人なんだろうと感動してしまいましたが、みなさんはどう感じましたか?

 人は心に余裕があるときは他人を思いやったり優しくできたりするものですが、そうでないときにはなかなかそうした行動が取れないものです。言い方を変えると、逆境や厳しい状況の中にあって心に余裕がないときほど、その人の真価が問われるということかもしれません。自分のことで考えてみると、やはりそういう状況のときほど、あとから振り返って恥ずかしくなるような行動を取っていることがありますから、今回の松山さんの行動が、よりまぶしく輝いて見えてしまいます。

 数十年前の一時期、松山千春さんをよく聞いていたことがあります。今回の件でまた松山さんの曲を聞いてみようかなんて思いましたが、さすがに松山さん、そんな影響まで考えて行動したわけではないと思いますけど(笑)

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