ふたば便り

オーナー社長のための事業承継 会社の価値を知る

日本の社長の平均年齢は60.8歳(※)となっており、中小企業の中には70代、80代になっても現役で活躍されている社長が数多くいます。しかし、特に財務内容が良いと言われる会社ほど、後継者に事業を承継しようしたとき税金面などで困難な問題に直面することが数多くあります。事業承継をする段階で慌てないよう、事業承継を考える入り口として、まず自社の株価を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。※「2015年全国社長平均年齢推移(東京商工リサーチ)

● 自社株評価が必要な理由

事業承継は大きく分けると、1,ヒトの承継(後継者の選定、育成)、2,有形資産の承継(株式、事業用資産)、3,無形資産の承継(経営理念や業務知識、人脈等)の3つの側面があります。

その中でも特に有形資産の承継は、「いつ、だれに、どうやって」承継するかを明確にしておくことで、その後の税額等に大きな違いが出ることがあります。会社の事業承継はその株式をどうやって後継者に渡すか、という点が重要なポイントとなりますので、会社の株式がどれぐらいの価値を持っているのか、その評価額を知ることが、事業承継の第一歩となります。

● 株価が高い場合の問題点

自社株を親族以外の第三者に売却するのであれば、オーナーとしては、株価が高いほど得られる金銭が多くなる可能性が高くなるため、株価は高いほうが有利といえます。しかし、親族に承継する場合は一般的に、自社の株価が低いほど各種の税額が小さくなるため、株価は低いほうが有利であることが多いといえます。株価が高いと相続税や贈与税が高くなり、後継者に株式を集中させることができず株式が分散してしまうということも起こりかねません。

■株価が高くなる理由(要因)

①過去の利益の累計で算定

自社株の算定は単年度の利益で金額が決まるわけではなく、創業以来の利益の累計で計算することになります。自社株の評価が高くなっているということは、会社が今まで頑張ってきた証です。そのため、「最近、赤字続きだから……」といって、自社の株価が低いとは限りません。

②含み益の存在

土地は取得価格(=帳簿価格)ではなく時価で評価を行うため、時価の低い時代に取得した土地をそのまま保有している会社の場合、株価が思いのほか高くなる場合があります。

③簿外処理した保険など

節税のために簿外処理した生命保険などがあると、株価を押し上げる要因になります。

● 具体的対策の検討

株価を引き下げる対策をとることはもちろん可能ですが(例:配当を出さない/あるいは配当率を引き下げる、不良債権の償却などで経費を増やす、含み損のある資産を売却する、退職金を支給する)、むやみにこうした対策をとると、会社の財政内容を悪化させてしまうこともあるため注意が必要です。こうしたことにならないよう、後継者への株式移転は計画的に行う必要があります。 そのためにも、まずは自社の株価=自社の価値を知り、現状を把握することが重要です。

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