電子帳簿保存法におけるスキャナ保存の要件が改正されました
2016年 10月号(Vol.170)
平成28年度の税制改正により、いわゆる「電子帳簿保存法」の一部が改正され、スキャナ保存の要件の一部が改正されました。今月はこの制度と改正の概要をご紹介します。
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●制度の概要
- 税務上、文書の保存は紙によることが原則ですが、スキャナ保存制度では、それらについて事前に所轄税務署長の承認があればデジタルデータに変換して保存することも可能になるという制度です。スキャナで読み取ってデジタル化したデータで保存できれば紙の書類が不要になり、省スペース化や過去の証憑を探しやすいなど業務効率化にもつながります。
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●改正の概要
- 1 スキャナについて「原稿台と一体型」に限るという要件が廃止されました。
- これまで、国税関係書類の読み取りを行うスキャナについては、原稿台と一体型のものに限るという要件がありましたが、この要件が撤廃されました。
- 2 領収書等の受領者等が読み取る場合の要件が整備されました。
- 領収書や請求書等について、その受領者や作成者が読み取る場合、受領等後、その者が署名の上、3日以内にタイムスタンプ※1を付すことが要件とされました。またこの場合で読み取る国税関係書類の大きさがA4以下であるときは、大きさに関する情報の保存が不要とされました。
- 上記1、2の改正により受領した領収書等をスマートフォンなどで読み取ることが可能になりました。
- 3 小規模企業者※2の特例を創設
- 保存義務者はいわゆる適性事務処理要件(①相互けんせい※3、②定期的なチェック、③再発防止策)に関して、事務手続や規程を整備するとともに、これらに基づいた事務処理を行う必要がありますが、保存義務者が小規模企業者の場合で、②の「定期的なチェック」を税務代理人(税理士など)が行うときは、①の「相互けんせい」の要件については不要になります。
- ※1タイムスタンプ
- (一財)日本データ通信協会が定める基準を満たす業者によって、対象書類が刻印された日時に存在し、現在まで変更されていないことを証明する技術のことで、今後各ソフトウエアメーカーからリリース予定です。
- ※2小規模企業者
- 常時使用する従業員の数がおおむね20人(商業又はサービス業に属する事業を主たる事業として営む者については、5人)以下の事業者。
- ※3相互けんせい
- 各事務に関する職責をそれぞれ別の者にさせるなど、明確な事務分掌の下に相互にけんせいが機能する事務処理の体制がとられていることが必要。
- 申請書の提出やタイムスタンプへの対応などが必要になりますが、領収書等の電子化は中小企業にとっては経理作業の効率化、コスト削減のチャンスともなります。来年の本格的な施行に向けて、領収書等のスキャナ保存制度を検討してみてはいかがでしょうか?
●制度を利用するための留意点
国税関係書類を改正後の要件でスキャナ保存する場合、電子データの保存に変更する3か月前までに申請書等を提出する必要があります。
(例:平成28年9月30日申請書提出→平成29年1月1日運用開始)