「名義預金」とは? 贈与を否定されないためのポイント
2017年 12月号(Vol.184)
「名義預金」とは、預金の名義人と実質的な預金の所有者が別人である場合の預金のことをいいます。名義預金は相続で問題になることが多く、特に、お金を贈与する際に直接現金で渡すのではなく、贈与される人の名義の預金口座に入金している場合に問題になります。その預金が名義預金であると指摘されると贈与自体が否定されてしまう可能性があり、贈与者の預金と扱われてしまいます。そこで今月は、名義預金と指摘されないためのポイントをいくつかご紹介しましょう。
【 ポイント1:預金口座の管理を名義人が行う】
下図の例では、祖母が孫名義の預金口座に入金することでお金を贈与しています。この場合、この口座を「誰が」管理しているか、ということが重要になります。
本来なら、名義人である孫自らがこの口座の通帳や印鑑、キャッシュカード等を管理し、自由にお金を引き出すことができるはずなのですが、もしもこれらを祖母が管理して孫の自由にならないのであれば、その口座にあるお金は名義預金として祖母の財産とみなされることになります。定期預金の場合の継続の手続きや、名義人の住所変更等の手続きを誰がしたのか等も判断のポイントとなります。
【 ポイント2:口座の印鑑の使い回しをしない】
預金口座開設に使用した印鑑が、他の人の口座開設でも使い回しされている場合には、名義預金と捉えられてしまう可能性が高まります。もし使い回している場合にはその理由と、印鑑を管理しているのが誰なのか、単なる「名義」でないことを第三者にも説明できることが必要になると思われます。
【 ポイント3:贈与の事実が確認できる】
贈与は、「与える」側と「もらう」側との、双方の意思と合意があって初めて成立するものです。しかし、「あげます」という意思表示だけがあって「もらいます」という意思表示がない(例:もらう側には内緒にしておきたい)というケースも見受けられ、上図の例でいうと、孫名義の口座はあるけれど、その口座の存在を孫が知らない、というような場合があります。しかしこれでは、双方の合意がないため、贈与の事実がない、と判断されてしまうことになります。贈与は口約束だけでも成立しますが、第三者が贈与の事実を確認できる書面として贈与契約書を作成し、双方が記名(署名)押印することは有用と言えます。また、贈与税の申告と納税も贈与の事実を証するものとして有効です。
名義預金に当たるかどうかは、贈与を行った時や贈与税の申告を行った時ではなく、その後発生する相続に係る相続税申告後の税務調査で指摘される場合が多いようです。相続税の税務調査では、亡くなった人(被相続人)の過去の資産の移動状況などが確認され、その際、名義預金の存在が指摘されてしまうと、被相続人の財産がその分増えて相続税が増えてしまうため、注意が必要です。