民法(相続関連)改正のポイント~配偶者の居住権の保護
2018年9月号(Vol.193)
今年7月、約40年ぶりとなる民法(相続関連)の改正が行われました(平成30年7月13日公布)。この改正では、昨今の高齢化の進展により、相続開始時における配偶者の年齢が相対的に高齢化している現状をふまえ、配偶者の居住の権利を保護するための方策等が盛り込まれました。今回の改正の大きなポイントは、下図に記載した6つですが、①の配偶者の居住権を保護するための方策について概要をご説明します。
【配偶者の居住権の新設】(公布日(7月13日)から2年以内に施行)
今回の改正により、相続開始時に夫又は妻(被相続人)が所有する住居に同居していた配偶者である妻又は夫(相続人)が、被相続人の死後も引き続き居住できる権利が新設されました。この権利は、残された配偶者を保護する観点から設定されたもので、「配偶者短期居住権」と「配偶者居住権」の2種類があります。
(1)配偶者短期居住権
住居が配偶者の相続財産でなかったとしても、遺産分割が終了するまでの間、配偶者がそのまま無償で住居に住み続けること(最低6か月間)を保護する、比較的短期間の利用権です。
(2)配偶者居住権
配偶者の住居を対象として、終身又は一定期間、配偶者にその使用等を認める法定の権利です。遺産分割等における選択肢の一つとして、あるいは被相続人の遺言等によって、配偶者に配偶者居住権を取得させることができるようになります(右図参照)。
住居を配偶者以外の者が相続等によって所有することになった場合でも、配偶者は配偶者居住権によって、住居にそのまま住むことができます。その場合、住居の新たな所有者に対し「配偶者居住権」の登記を請求することも可能で、登記することによって、第三者に対する権利の主張も可能となります。
なお、相続の際、配偶者居住権によって配偶者が自宅以外の財産を取得しやすくなる一方、配偶者居住権は配偶者の取得した相続財産として評価され、相続税の課税対象にもなりますので、注意が必要です。