ふたば便り

民法(相続関連)改正のポイント~遺言・遺留分制度の見直し

2018年11月号(Vol.195

 今年7月に約40年ぶりに行われた民法(相続関連)改正のポイントのうち、先月取り上げた「遺産分割等に関する見直し」に続き、今月は遺言制度や遺留分制度に関する見直しについて概要をご説明します。

自筆証書遺言の方式緩和

(平成31年1月13日から施行)

 遺言書をすべて自筆で作成する自筆証書遺言に添付する財産目録は、個々の財産が確実に特定できるよう、地番や地積、金融機関や口座番号等を正確に記載しなければならず、多数の財産を所有する遺言者にとっては大変な作業でした。それが今回の改正により、登記事項証明書預金通帳の写し又はパソコンで作成した一覧等を用いて、各ページに署名・押印することで、自筆証書遺言に添付する財産目録として取り扱うことができるようになります。

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【遺言書の保管制度の創設

(公布日(平成30年7月13日)から2年以内に施行)

 従来、自筆証書遺言に係る遺言書は自宅で保管されることが多く、遺言書の紛失等、相続をめぐるトラブルが発生するおそれがありました。その回避策として、自筆証書遺言(無封のものに限る)の保管を法務局に申請できる制度が創設されます。この制度を利用すると、相続人や遺言執行者は、遺言者の死後、法務局に閲覧を申請できるようになり、家庭裁判所での検認の手続きも不要になります。

 

【遺留分制度の見直し

(公布日(平成30年7月13日)から1年以内に施行)

(1)遺留分の金銭債権化

 例えば、社長だった父が、後継者の長男に会社の土地・建物を、長女に預金を相続させる旨の遺言をして死亡し、遺言の内容に不満を持った長女が長男に遺留分減殺請求(※)をした場合、従来、遺留分は現物での返還が原則だったため、会社の土地・建物を長男と長女の共有にせざるを得ず、事業承継の支障となるおそれがありました。しかし今回の改正により、遺留分に相当する金銭支払を請求する権利が認められるようになります。上の事例では、長女は長男に対し、土地・建物の代りに、その評価額に相当する金銭の請求が可能になります。また、請求された側が金銭を直ちには準備できない場合には、裁判所に請求することで支払の先延ばしができるようになります。

(※)相続財産に対して法律上認められた最低限の取り分(遺留分)を請求すること

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(2)遺留分の算定方法の見直し

 従来、相続人に対する特別受益に当たる贈与(※)には時間的な制限が設けられておらず、何十年前に行われたものでも、遺留分の算定の際に算入されていましたが、改正後は、相続開始前10年間の贈与に限り原則算入するという制限を設け、それより前に贈与が行われた財産は遺留分算定の際に算入しないことになります。

(※)結婚や養子縁組のための贈与、又は生計の資本として受けた贈与で、結婚の際の持参金や支度金、新居取得の費用援助や土地・株式の贈与等、生前に行われた相続財産の前渡し分が対象となります

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