西俊輔の「毎日楽しく」

ゆでガエルにならないよう気をつけないと

 以前にこの「毎日楽しく」で書いたことがあるかもしれませんが(なにしろ今年で連載20年!ですから都度確認はしてなくて・・・)、みなさんは「ゆでガエル理論」ってご存知ですか? カエルはいきなり熱湯に入れると驚いて逃げ出すけど、常温の水に入れて水温を少しずつ上げていくと逃げ出すタイミングを失って死んでしまう、という話です。実はこれ、科学的には根拠のない話なんだそうですけど、ビジネスをする上で、環境の変化に対応することの重要性や困難さを例えるのによく使われる話です(科学的な実験では、いきなり熱湯に入れるとカエルは死んでしまうし、温度を徐々に上げていくと熱くなる前に飛び出すそうです)。

 人は急激な変化には危機意識が働くけど、緩慢な変化だとそれに慣れてしまい、致命的な状況になるまで気づかないという状況をあらわしているわけです。たとえば、写真フィルム業界はこの「ゆでガエル理論」の例として取り上げられることが多いそうですが、徐々に進んでいったデジタル化の波に対応できず、ポラロイドやコダックなど多くの大企業が倒産してしまいました。

 人はもともと安定を求める性質を持っていて、行動経済学の研究でも、少しずつ起こる変化には気付きづらく、たとえ気付いても安易に考えて抜本的な対策を打つのが遅れる傾向にあるそうです。そのため、会社の業績が急激に悪化するのではなく少しずつ悪くなっていくとそれに慣れてしまい、改革のきっかけがつかめなくなるということはよくあるそうです。特に、過去の成功体験がある会社ほどその傾向は強く、気付けばゆでガエル状態になっているというわけです。

 こうした、徐々に起こる環境の変化が具体的にどういうものかは業界によってさまざまでしょうけど、私たち会計事務所業界を含む多くの企業に関係する環境変化といって最近真っ先に頭に浮かぶのはAI(人工知能)やDX(デジタルトランスフォーメーション)などでしょうか。このAIやDXに対応できるかどうかで、私たち会計事務所もこれまでとは業務のやり方が大きく変わるかもしれず、場合によってはこれが命運を分けることになるかもしれないんですが、なにしろ私自身がこういった分野にあまり詳しくないので、どう対策を取ればいいのか悩んでます・・・(そしてそのうちゆでガエルになるのかな・・・)。そもそも、まだ気づいていない他の変化があるかもしれないこともすごく心配ではあるんですけどね・・・。

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