西俊輔の「毎日楽しく」

2016年4月号(Vol.128)

以前の「毎日楽しく」で、何らかの意思決定をする際や事の善悪を判断する際にはより多くの正確な情報がないと正しい判断が下せないというお話を書いたことがあります。情報発信者の主観が入っていたり、情報の一部しか入手できないなどといった状況があると、それに基づいて下した判断には間違っている可能性があることは、多くの人が理解できることだと思います。

 

ただ問題は、自分が目にしたり耳にする情報に偏りがあるのかないのか、情報が一部だけなのかどうなのかといった判断がなかなかつかないということだと思います。たとえば私たちが毎日見ている新聞やテレビの報道ですが、自分がその内情を詳しく知っているニュースであれば、その報道に偏りがあるのか、情報の一部なのかの判断がある程度はつくかもしれません。ところがそうでない場合には、少なくとも私はそうですが、新聞なりテレビの報道をそのまま鵜呑みにしてしまうことがよくあります。政治家や芸能人の方が、新聞や雑誌に記載されていることは正しくない、とか、事実無根と言ってる場面を見ることがありますが、その真実を知らない私たちは、新聞や雑誌に記載されてることの方を信じてしまっても無理はありません。

 

 ちょうどこの原稿を書いていたとき、ベルギーの空港と地下鉄で大きな爆弾テロが起きて、多くの人が死傷するという痛ましい事件がありました。15年ぐらい前に起きたアメリカの同時多発テロ事件以後、従来の戦争とは形態の違う、一般市民を標的にしたテロ事件のニュースをよく目にするようになってしまいました。もちろん、こんなことは許されることではありませんし、テロの首謀者と実行者は厳しく罪に問われなければなりません。でも一方で、こうしたテロリストたちの国や地域に対する欧米やロシアなどによる空爆によって、その地域の罪のない一般市民にどれほどの被害が出ているのか、欧米などで起きたテロ事件ほどには報道されないために、私たちはあまり情報を持っていないのではないでしょうか。欧米などによる空爆で家族を失った人がテレビのインタビューで、(少なくとも報道される量において)欧米の人間と中東の人間とでは命の重さが違うのか、と言っていたのが印象的でした。テロを起こすことに正当な理由がある、などとはまったく思いませんが、こうした凄惨なテロ事件が起こるつど、その一方では欧米諸国が中東の人達にどれほどひどいことをしているのだろう? ということが、どうしても気になってしまいます。

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