西俊輔の「毎日楽しく」

2017年2月号(Vol.138)

女性として世界で初めて世界最高峰のエベレストに登頂した田部井淳子さんが昨年10月20日に亡くなりました。先月、この田部井さんのドキュメンタリー番組がテレビで放映されていたので見た方も多いかもしれません。

田部井さんがエベレスト登頂を成功させたのは1975年、田部井さんが36歳のときでした。女性がエベレストに登ると言っても、誰もそれを信用しなかった時代だったそうですから、もちろん、そこには大変な苦労があったそうです。かなりの高度ですから酸素が薄いことは誰でも想像がつきますが、デスゾーンと言われる8,000メートルを超えると(エベレストの頂上は約8,850メートル!)、酸素は地上の約3分の1しかないそうで、たとえば、地上にいる人をいきなりその高さに連れて行くとものの数分で失神し、そのまま死に至るという恐ろしい世界なんだそうです。実際、その空気の薄さからヘリコプターもその高さでは浮力が得られないため飛ぶことができず、エベレスト登山で亡くなった方々の遺体もやむなく放置されているんだそうです。また、平均気温もマイナス20℃から35℃で(これは真冬の旭川もいい勝負かも…)さらに吹雪くわけですから、まさに死の世界です。こうした、ただでさえ過酷な登山の最中、雪崩に巻き込まれて命の危険に直面しながらも田部井さんはエベレスト登頂を成功させ、その後も世界各地で登山を続けて女性としてはこれも世界で初めて、世界7大陸にある最高峰の山々すべての登頂に成功しました。晩年に体調を崩してからも登山を続けた田部井さんの最後の登山となったのは昨年7月の富士山で、被災地・東北の高校生を引率しての登山だったそうです。すでにガンに侵され、体が思うように動かない中で高校生たちと一緒に登山をしていた田部井さんは自身の体も相当つらかったと思いますが、一緒に登る高校生たちを次のような言葉で励まし続けました。

一歩一歩歩けば、どんな山の頂上にだって行くことができます。急ぐ必要はありません。歩き続けるだけでいいんです。そこには近道なんてありません。でも、あきらめるという言葉も無いんです。」

強靭な体力と精神力とで、亡くなる直前まで山に登り続けた田部井さんの言葉には、私自身何度も勇気づけられてきましたが、みなさんはどう感じますか?

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