2017年4月号(Vol.140)
宅配大手のクロネコヤマトが、ドライバーの処遇改善などを目指して宅配料金の値上げをするというニュースが話題になりました。消費税増税によるものを除けば、ヤマトが値上げをするのは実に27年ぶりとのことです。またこれと合わせて、荷受けする量を抑制する総量規制や、配送する時間帯を指定できる時間帯の枠そのものの見直しも検討しているそうです。
こうしたヤマトの動きの背景にあるのは昨今のインターネット通販の拡大で、特にヤマトの大口取引先であるインターネット通販大手のアマゾンでは、注文した当日に商品が届くサービスや、注文してからなんと1時間で商品を届けるサービスまであり、こうしたサービスを支えているヤマトの負担が拡大しているということがあります。また核家族化の進展や単身世帯の増加などで荷物を受け取る側でも自宅を不在にしているケースが多く、再配達が増えていることもヤマトの負担を増やしているようです。
宅配業界に限らず、利用者にとって便利な世の中になっていくということは、すなわち、サービスの提供者側では負担がどんどん増えるということでもあります。私たちは消費者としてサービスの提供を受ける立場であると同時に、仕事をとおして社会にサービスを提供する立場にもありますから、行き過ぎたサービスは結局のところ自分たちの首を絞めることにもなるわけです。最近、過労死などをきっかけに残業時間の上限見直しも話題ですが、これなども、勤務時間そのものに上限を設けることで、行き過ぎたサービスを抑制するという効果があるかもしれません。
機械やコンピューターの発達などで、私たちの生産性は一昔前に比べれば格段に向上しているはずで、本来ならそれに比例して仕事をする私たちもどんどん楽になっても不思議ではないのですが、求められる商品やサービスはそれ以上にレベルの高いものを求められるせいか、現実にはますます忙しくなっているようです。
仏教には「足るを知る」という、もうこれで十分、という考え方がありますが、私たちもこの辺りでそろそろこれで十分と思って、若干のサービス低下を世の中全体で受け止めてあげて、頑張りすぎない必要があるのかもしれませんね。