西俊輔の「毎日楽しく」

かっこよすぎる青春エピソード

この話題は、タイミング的には先月の「毎日楽しく」に書くべきだったんですが、今年のお正月に開催された箱根駅伝で素敵なエピソードがあったので、今月はこれをご紹介させてください。

箱根駅伝は、東京大手町をスタートして箱根の芦ノ湖を目指す1日目の5区間約107kmを、5人のランナーがそれぞれ約20kmずつ走ってタスキをつなぎます。2日目はこれと同じコースを(正確にはゴール直前のコースが1日目とは少し違いますが)今度は逆に箱根芦ノ湖をスタートして東京大手町のゴールを目指してやはり5人のランナーがタスキをつなぎます。その全10区間の中でも、1日目の最長距離であり、キツイ上り坂がいくつかある難しい2区は「花の2区」と呼ばれて、各大学のエースランナーが出揃う区間と言われてます。

今年も、優勝候補と言われていた駒澤大学が絶対的エースの田澤廉選手をこの2区にもってきましたし、同じく優勝候補の青山学院大学もエースの近藤幸太郎選手をここにもってきました。そして、箱根駅伝に先立って開催された出雲駅伝や全日本大学駅伝で比較的良い成績をおさめて箱根でも上位入賞が期待されていた中央大学もエースの吉居大和選手をこの2区にもってきました。

トップと9秒差でタスキを受け取った中央の吉居選手は若干オーバーペース気味にとばして、2区の序盤で駒澤の田澤選手を抜いて一時トップにたちますが、その後地力に勝る田澤選手に抜き返されて吉居選手はズルズルと遅れ始めます。そして後から追いかけてきた青山の近藤選手に追いつかれてそのままおいていかれそうになったとき、青山の近藤選手は他校のライバルである吉居選手に対して、「ついてこい!」と励ましたそうです。

実はこの二人、大学は青山と中央に分かれてライバルになったものの、どちらも愛知県出身で同じクラブ出身の大学入学以前からの知り合いで、1学年上で当時から強かった近藤選手は吉居選手の憧れだったんだとか。それに励まされて息を吹き返した吉居選手はその後、近藤選手どころか駒澤の田澤選手まで抜き返してその区間1位でタスキをつなぐことになりました。

レース後、近藤選手と吉居選手が知り合いだったことを初めて聞いた青山の原監督は「それ早く言ってよー。吉居くんはなぜ青山に来てくれなかったのかな?」と言ったそうです(笑)。あまりにかっこいい青春エピソードに、おじさんの私は思わずウルっときてしまいましたが、今年の箱根駅伝「花の2区」は記憶に残るすばらしいレースでした。

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