西俊輔の「毎日楽しく」

税理士法違反で逮捕

先月号では、自由に持ち帰ることができる販促物を持ち帰ったことで窃盗罪に問われた人の話を書きましたが、今月もまた犯罪の話をひとつ。

今年の5月、税理士の資格を持たずに税理士業務を行ったとして、東京都杉並区の記帳代行会社社長である54歳の男性が税理士法違反で逮捕されました。同時に、この男性に税理士の名義を貸していたとして、都内の55歳の男性税理士も書類送検されました。なんでも、税理士の名義貸しでの摘発は警視庁では初めてのことだったんだとか。ちなみに税理士の「名義貸し」というのは、税理士が自身でその内容を把握しないまま第三者が作成した税務申告書に税理士として署名するなど、税理士の名義を他人に使用させる行為のことを言いますが、自身の事務所で雇用している職員が作成した申告書に署名するのとは違い、雇用関係などがまったく無い第三者の申告書に署名した場合などに問題になることが多い違反行為です。

そもそも税理士法違反で容疑者が逮捕されること自体、珍しいことだと思いますが、逮捕された記帳代行会社社長の男性は実は過去にも同じことをして税務署から厳重注意を受けていたんだそうです。今回は再犯ということで東京国税局が警視庁に告発していたようですが、初犯のときは注意だけで済んでいたのになぜまた・・・ 逮捕の理由にはそれ以外にももしかすると、3年間で約300件の顧客の書類を作成して約1億3,000万円もの報酬を得ていたこともあるかもしれません。3年間で1億3,000万円ということは年間4,000万円を超える「売上」で、300件の顧客ということは1件あたり43万円ほどになりますから、同業の立場からみると、まあまあの繁盛店だったレベルかもしれません。

 逮捕された男性は税理士事務所で30年以上の勤務経験があり、その後「独立」して自身の記帳代行会社を経営していたようですが、30年も税理士事務所に勤務していれば、たとえ税理士の資格が無くても、実務的には税理士業務は十分行えると思います。そのため、そうした税理士法違反行為をする者がいないかを監督官庁である国税はもちろん、税理士会も厳しく監視し、私たち税理士に対しても、そうした者に税理士名義を「貸し」たりしないよう(よく知らない人が作成した税務申告書にサインしないよう)、厳しく指導はされてるんですけどね。

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