トイレットペーパーと多元的無知
2020年03月02日
新型コロナウイルスの感染が世界各地で広がるにつれ、予防用のマスクが全然手に入らなくなった訳ですが、香港やシンガポールなどでは2月上旬からトイレットペーパーも品薄になったという報道があり、日本国内でも「マスクとトイレットペーパーは同じ原料で作られているので、トイレットペーパーが品切れになる」といった内容の投稿がSNSに寄せられていました。
これについて、熊本市の市長が2月27日に「デマに注意してほしい」と呼びかけ、翌28日には業界団体や経済産業省などが「供給に不足はない」などと冷静な行動を呼びかけていたのですが、そうした誤った情報をきっかけにトイレットペーパーの買いだめが相次ぎ、旭川の私の家の近くのスーパーやコンビニ、ドラッグストア等でも、トイレットペーパーの在庫が棚から全く消えてしまうという事態になりました。
こうした中、トイレットペーパーのメーカー39社による業界団体「日本家庭紙工業会」は今日3月2日、改めて消費者に向けて買いだめをしないよう文書で呼びかけました。
それによると、現在、トイレットペーパーのおよそ98%が国内生産で、どの会社にも在庫はあり、供給量には全く問題がないとのこと。
更に、トイレットペーパーの一般的な家庭における利用状況は、1人当たり1か月で4ロール程度、4人家族の場合は1か月で16ロール程度なので、買いだめや転売をしないよう呼びかけています。
しかしSNS上では、デマを訂正する投稿がある一方で、「品薄になって逆に自分が困るから買わなくちゃいけなくなる」など、誤った情報だと理解しながらも購入した、という投稿も多く、人々の不安に歯止めがかからない状況です。
こうした、「私はデマに騙されない、でも他の人たちはきっと騙されるに違いない」という考えから、「自分だけは違うと自覚しながら、結果的に大勢と同じことをしている」現象を、社会心理学的には「多元的無知」と言うそうです。
「多元的無知」の分かりやすい例は「裸の王様」の話です。
本当は王様の服は誰にも見えていないにもかかわらず、「バカ」と思われるのが嫌で、みんな王様の服を褒めてしまう。結果的に、「みんなには王様の服が見えている」と思ってしまって、誰も「王様は裸」とは言えない状態になってしまう、というお話。
このお話では、一人の子どもが「王様は裸だ!」と叫ぶことで、みんな「やっぱり裸だったんだ」と悟る訳ですが、現実の今の日本ではどうなのでしょうか?
早く、品薄が解消してくれればいいんですが…
(渡)