二つの壺
2022年05月23日
二つの大きな壺をもつおばあさんがいました。
長いの天秤棒の両はじに壺を吊り下げて、肩にかつぎ
水汲みが日課です。
井戸と家はかなりの距離があります。
そのためヒビの入った片方の壺の水は家につく頃には
半分に減ってしまいました。
ヒビの入っていない方の壺は「水をこぼさなかった」と得意げです。
一方でヒビの入った壺は ヒビを恥ずかしがって
半分しか働けなかったことを悲しんでいました。
二年後、ヒビの入った壺は井戸端でおばあさんに言いました。
「私にヒビがあるせいで、帰る頃には、水が半分になってしまって
恥ずかしい。」
するとおばあさんは微笑んでこう言いました。
「ここまで来る道のあんたの側だけに花が咲いているのを見なかったのかい?
反対側には咲いていないよ。
あんたにヒビが入っているのを知っているので
そっち側にだけ種をまいておいたのさ。
あんたは毎日、帰る道すがら、花に水をあげていたんだ。
この二年間、きれいな花をテーブルに飾れているのは
あんたのおかげさ。」
きぼう 沼崎 勇さんのエッセイから引用しました。
フレデリック・ルノワールさん「世界の終わり賢者たちの遺言」より(フランスの哲学者・・・らしいです。 )