令和
2019年06月19日
新元号「令和」になってから1ヶ月半以上が過ぎました。
自分個人の感覚で言うと、「昭和」から「平成」に変わった時よりも
すんなりと「令和」が受け入れられたような気がします。
平成の時は、割と突然変わったような感じがあったせいかもしれません。
今回は、結構以前から今年5月に元号が変わることが予告されていましたから。
さて、そんな「令和」ですが、
これが決定された平成31年4月1日の内閣総理大臣記者会見によると、
次のような意味合いであるとのことです。
《新しい元号は「令和」(れいわ、Reiwa)であります。
これは、万葉集にある
「初春(しょしゅん)の令月(れいげつ)にして
気淑(きよ)く風和(やわら)ぎ
梅は鏡前(きょうぜん)の粉(こ)を披(ひら)き
蘭は珮後(はいご)の香(こう)を薫(かおら)す」
との文言から引用したものであります。
この「令和」には、人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ、
という意味が込められております。》
さて、ここで典拠とされている『万葉集』は、日本の奈良時代の古典ですが、
引用元となっている箇所は漢文です。原文は以下のようになっています。
《于時初春令月、気淑風和。》
実はこの一文は、中国・後漢の文人・張衡(ちょうこう 78年-139年)の
韻文作品「帰田賦」の
《仲春令月、時和気清》(仲春の令月、時は和し気は清し)
という詩句を踏まえています。
一般に古典作品は、それより更に古い時代の古典作品の
趣向や言葉を踏まえて作られることがよくあるもので、
今回の「令和」が、初めて純粋な日本の古典を典拠とした、などと喧伝されましたが、
実のところ、遡れば中国の古典に基づいていたことが分かるので、
そんなことに拘るのもどうなのか、という感じです。
更に、中国の漢文古典には、ずばり「令和」の二文字が、しばしば登場します。
例えば中国最古の医書『黄帝内経(こうていだいけい)』の『霊枢』は、
鍼(はり)や灸(きゅう)の理論と実践を解説した古典で、その中に
「知迎知隨、気可令和」(迎を知り隨を知り、気、和せしむべし)
という一文があります。意味は、
「鍼を体のツボに指すとき、体の気の流れと逆に刺す『迎』と、
流れに沿って刺す『隨』の双方のやりかたを知っていれば、
体の気を調和させることができる」というもの。
東洋医学では、「病気」や「元気」などの語からも分かるとおり、気の流れを重視します。
気の流れを調和させる(「和せしむ」)ことにより、病気を治療するのです。
尚、上記の意味での「令和」は、「調和させる」という命令形の語句です。
これが、「政府が国民に、不平不満を言うな、と押しつけている気がする」
と言って、「令和」の年号を嫌う人もいるらしいのですが、
そんな後ろ向きな考えにならずに、
「気の流れを調和させて健全な生活を送ろう」
というような前向きの気持ちになりたいものです。
(渡)