償いの雪が降る
2025年05月01日
「償いの雪が降る」は、アメリカの作家アレン・エスケンスのミステリー小説です。
大学生のジョーは、授業の課題で身近な年長者の伝記を書くことになります。母子家庭で父親も祖父母もいないため、介護施設を訪れたところ、末期がんの患者カールを紹介されます。カールは三十数年前に少女暴行殺人で有罪となった男で、病気のため仮釈放され、施設で最後のときを過ごしていました。カールはジョーのインタビューに応じ、彼の半生を語ることにします。ジョーはカールの友人への聴き取りや過去の裁判記録なども調べるうちに、この事件に疑問を抱くようになります。かつて、カールはベトナム戦争に従軍しましたが、戦地では身の危険も顧みず同僚兵の命を救ったり、ベトナム人の子供を助けたりしていたことがわかってきます。また、裁判もスピード重視で、検察の取り調べもずさんだったことも判明します。本当にカールは犯罪者なのか…。ジョーは恋人のライラと自閉症の弟ジェレミーと共に真相を探り始めますが…。
この小説は多少キワドい表現もありますが、読後感のさわやかさでは私の中の年間ベスト3に入れてもいいと思える作品です。
また、「償いの雪が降る」の原題は「私たちが葬る人生」ですが、この小説の訳者は小説の中で、死期のせまったカールが「死ぬ前に、一度、盛大に降る雪が見たい。」と言ったことにヒントを得てこの日本語の題名にしたのだと思います。これからAIが進化して、翻訳者の居場所も狭くなってくるようですが、AIではこのような題名にすることはまだまだムリだろうなと思いました。
ふたば税理士法人 T.M.