新型コロナウイルスとスペイン風邪
2020年04月20日
新型コロナウイルス感染症の猛威は、今のところ留まることを知らないようです。
今日4月20日現在で国内感染者数は、確認されただけでも1万1千人を超え、東京都では3200人近く、北海道でも450人以上となっています。
そしてここ最近、感染防止のために盛んに言われているのが、「3つの密(密閉・密集・密接)を避けましょう」というスローガンです。
《集団感染の共通点は、特に、「換気が悪く」、「人が密に集まって過ごすような空間」、「不特定多数の人が接触するおそれが高い場所」です。
換気が悪く、人が密に集まって過ごすような空間に集団で集まることを避けてください。》
と、広報されています。
ところで、今から100年ほど前にも全世界で大流行した伝染病がありました。
「スペイン風邪」です。
これは、ヒトにおけるA型インフル エンザウイルスによる流行であることが科学的に確認された最初の事例でもあり、「人類史上最も深刻な危機の一つ」だった、とも言われています。
第一次世界大戦中の1918年に始まったスペイン風邪は、世界人口の3分の1に当たる約5億人、致死率は2.5%以上、死亡者数は全世界で4,000万人とも、5,000万人とも、1億人とも言われています。
日本でも約2300万人の患者と約38万人の死亡者が出たという話です。
この当時は、抗生物質は発見されていなかったし、有効なワクチンなど無く、そもそも原因がウイルスであることすら掴めていなかった訳ですが、
大正8年(1919年)1月、日本の内務省が一般民衆向けに出した「流行性感冒予防心得」は、現代の新型コロナ禍における一般的な対処・予防法と驚くほど似ています。
以下、その内容を引用します。
流行性感冒予防心得
内務省衛生局
1919年1月
はやりかぜは如何にして伝染するか
はやりかぜは主に人から人に伝染する病気であるかぜ引いた人が咳や嚏をすると眼にも見えない程微細な泡沫が三、四尺周囲に吹き飛ばされ夫れを吸ひ込んだ者は此病に罹る
かぜを引いて治つた人も当分の間は鼻の奥や咽頭に此病毒が残つて居り又健康な人の中にも鼻や咽頭に病毒を持て居ることがある是等の人々の咳や嚏の泡沫も病人同様危険である
罹らぬには
- 病人又は病人らしい者、咳する者には近寄つてはならぬ
- 病中話などするのは病人の為めでもないから見舞に行つても可成玄関ですますがよい
- 病家では御客様を絶対に病室には案内してはならぬ
- 沢山人の集つて居る所に立ち入るな
- 時節柄芝居、寄席、活動写真などには行かぬがよい
- 急用ならざる限りは電車などに乗らずに歩く方が安全である
- かぜの流行する時節に人に近寄る時は用心して人の咳や嚏の泡沫を吸ひ込まぬ様注意なさい
- 人の集つて居る場所、電車、汽車などの内では必ず呼吸保護器(「レスピレーター」、又は「ガーゼマスク」ともいふ)を掛け、それでなくば鼻、口、を「ハンケチ」手拭などで軽く被ひなさい
- 「ハンケチ」も手拭もせずに無遠慮に咳する人嚏する人から遠かれ
- 塩水か微温湯にて度々含嗽せよ、含嗽薬なれば尚ほ良し
- 食後、寝る前には必ず含嗽を忘れるな
罹つたなら
- かぜを引いたなと思つたなら直に寝床に潜り込み医師を呼べ
- 普通のかぜと馬鹿にして売薬療治で安心するな、外出したり、無理をすると肺炎を起し取り返しの着かぬことになる
- 病人の部屋は可成別にし看護人の外は其の部屋に入れてはならぬ
- 看護人や家内のものでも病室に入るときは必ず呼吸保護器を掛けよ
- 治つたと思つても医師の許しのある迄は外に出るな
- 地震の震り返しよりも此病気の再発は怖ろしい
此外気を付くべきことは
- 家の内外を清潔に掃除し天気のときは戸障子を開け放て
- 室の掃除は可成塵埃の立たざる様に雑布掛けするのが一等
- 家の周囲は塵埃の立たぬやうに先づ水を撒いて後掃け
- 学校、幼稚園、寄宿舎、工場などでは殊に是等の事に気を付けよ
- 旅人宿、貸席などは客のない間は日中必ず部屋の障子を開けて置け
- 寝具寝衣などは晴天の日には必ず日に曝せ
- 用心に亡びなし、健康者も用心が肝心
- 幼弱なる子供、老人、持病ある者は殊に用心せよ
- 人前で咳や嚏をするときは公徳を重じ必ず「ハンケチ」か手拭などで鼻、口を被へ
- 病人の喀痰、鼻汁などで汚れたものは焼くか煮るか薬で消毒せよ
- 病室内の汚れたものゝ始末は医師に相談して遺漏ない様にせよ
このような内容のものですが、100年経った今も、ウイルスへの基本的な対応法が変わっていないことが読み取れます。
逆に言えば、進歩もしていないのだ、ということですが…
(渡)