映画雑感 vol.95
2024年01月12日
先日映画館で、「PERFECT DAYS(パーフェクト・デイズ)」を観てきました。昨年のカンヌ映画祭で主演の役所広司さんが最優秀男優賞を受賞して話題になった映画です。監督はドイツの名匠ヴィム・ヴェンダース。
東京都内の公共トイレの清掃員として働く男(役所広司)の淡々とした毎日をただただ追っていく物語で、特に大きな事件もなければ大きな盛り上がりも無いんですが、これほど味わい深い映画は久しぶりに観ました。朝決まった時間に起きて決まった手順で出かける準備をし、仕事終わりには銭湯に行って、その後はいつもの居酒屋で一人軽く一杯のんで帰り、小説を読んでから寝るという同じような毎日を映画冒頭から何日分か観せられます。男は独身のようで古いアパートに一人暮らしをしていて、お昼の休憩時間に食べる昼食もサンドイッチを同じ公園で食べると決まってるようです。その際、天気が良くて公園の木々の木漏れ日がきれいだったりすると、それを写真に撮ったりもします。そうした日々の生活の描写にものすごく無口で穏やかな男の人柄がにじんでいるんですが、清掃のシフトのことでイラっとしたりもしますから決して悟りを開いたような完璧な人間ではありません。また、ここに至るまでに単純な人生を歩んできたわけではなさそうなこともなんとなくわかります(詳細はわかりませんけど)。
ほんの少しの「モノ」しか持ってなくても幸福そうな生活を送る主人公の姿は、現代の大量消費社会への若干の警鐘も含まれているのかもしれませんし、「PERFECT DAYS(パーフェクト・デイズ)」という題名が意味するところや、人生の価値や意味といったことを考えずにはいられない素晴らしい映画でした。そして、役所広司さんはやはりいい俳優さんだなー。