ふたば便り

貸倒れの税務上の留意点(2)

 前回9月号で、売掛金などの債権が回収できなくなった(貸し倒れた)場合に計上する貸倒損失が税務上の費用(損金)として認められるための要件などについて説明しましたが、今回は、実際に貸倒れが発生する前に、そのリスクに備えて計上できる貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)について、その概要を見ていきたいと思います。


【貸倒引当金とは】

 貸倒引当金とは、貸したお金等(債権)が回収されなくなる(貸倒れになる)リスクに備えて、予想される損失額をあらかじめ当期の費用として決算書に計上する損失の見積り金額のことです。
 実際に債権が貸倒れになった場合には貸倒損失が計上されますが、そうなる前に計上することができるのが貸倒引当金です。債権が将来、回収不能になる可能性がある場合にその見積り金額を計上することにより、決算書上で将来の損失の可能性を示す役割があります。なお、貸倒引当金が税務上の経費(損金)として認められるのは、期末資本金の額が1億円以下の法人等※1です。

  ※1 その他に協同組合、銀行、保険会社等。詳しくはお問合せください(以下、同様)。


【貸倒引当金の計算】

 貸倒引当金は、将来発生すると予測される貸倒れによる損失額がどの程度になるかを計算する必要があります。貸倒引当金の計算方法には税務上、「個別評価」と「一括評価」があり、個別評価の対象となる債権は回収不能になる可能性が非常に高いものに限られ、それ以外は一括評価となります。

(1) 個別評価
個別評価では、下記のように債権の種類によって貸倒引当金を損金にできる限度額が異なります。

<例>
◯債務超過の状態が相当期間継続して事業好転の見通しが立たない場合等
                     …限度額=対象金銭債権※2
◯破産手続開始等の申立てがあった場合等 … 限度額=対象金銭債権※2※3✕50%

  ※2 取立て等の見込み額や ※3実質的に債権とみられない金額を差し引いた金額で計算します。
         詳しくはお問合せください。


(2) 一括評価
 一括評価での貸倒引当金の計上は、売掛金や貸付金などの金銭債権が対象(敷金や保証金などは対象外)で、個別評価の対象となる金銭債権を除いたものとなります。
 一括評価の場合「期末の金銭債権額×繰入率」が損金算入の限度額となります。繰入率には「実績繰入率」と「法定繰入率」の2種類があり、実績繰入率は過去3年間で実際に生じた貸倒損失の額に基づいて算出し、法定繰入率は業種ごとに0.6%~1%と決められています(期末資本金の額が1億円以下の法人、協同組合等が対象)。ただし法定繰入率を使う場合、上記の算式での期末の金銭債権額は、実質的に債権とみられない金額※4を差し引いた金額となります。

   ※4 売掛金と買掛金の両方がある相手先に対する買掛金のように、債権と相殺可能な金額。
        詳しくはお問合せください。

一覧に戻る