ふたば便り

利益とキャッシュはなぜ一致しないのか(1)

 経営者の方々は、決算や月次報告で「今月は黒字です」と聞いたにもかかわらず、「儲かったのに、なぜ儲かった分のお金が残ってないのか?」と感じたことはないでしょうか?この疑問には、「利益」と「キャッシュ(現金・預金)」の違いが関係しています。今回はこの両者の違いと、ズレが起きる主な原因についてみていきたいと思います。

【利益とキャッシュの違いとは?】
 会計や税務では、「利益」は売上から費用を差し引いた金額で表しますが、これは発生主義というルールに基づき、取引が「発生した時点」で計算されます。一方の「キャッシュ」は、実際に現金・預金が手元に入ったり出ていったりした結果が現れます。ただ、取引が発生した時点とキャッシュの入出金のタイミングとは必ずしも一致しないため、利益とキャッシュにズレが生じることになります。
【ズレが起きる主な原因】
① 売掛金の回収タイムラグ
 企業間取引では、商品の納品と同時に代金が支払われず、月末締めの翌月末払いといった「掛け売り」が一般的です。例えば、100万円の商品を7月中に売って8月末に入金される場合、帳簿上は7月に売上と利益が計上されますが、実際の入金は1ヶ月先の8月です。つまり、
●7月:利益は計上されるがキャッシュは増えない
●8月:キャッシュは入るが利益は動かない
このように、7月時点でみると「利益は出ているのにお金がない」状態が発生します。
② 商品在庫の増加
 商品を仕入れても、販売されない限り損益(利益)には影響しません。仕入れた金額が費用(売上原価)になるのは、売れた分だけです。したがって、期末に在庫がある場合、
●利益:在庫分が費用化されず、その分の利益は減らない
●キャッシュ:売れた分も在庫分も関係なく支払った金額だけ減少
となり、「実際にはキャッシュが減っているのに帳簿上は利益が出ている」状態となります。
③ 固定資産の購入と減価償却
固定資産となる建物や機械、自動車等をキャッシュで購入した場合、費用となるのは耐用年数に応じて計算される減価償却費分だけです。つまり、
●利益:毎年、減価償却費分だけが減っていく
●キャッシュ:購入年度には大きく減るが、以降の年度では減らない(分割払いだと更に複雑)
これにより、利益とキャッシュの残高にズレが生じることになります。
④ 借入れと返済
 借入れと元本の返済部分は損益に影響せず、支払利息のみが費用として扱われます。つまり、
●利益:利息の支払い分を除き変わらない
●キャッシュ:借入れの際に大きく増え、返済の度に支払額分だけ減る
借入金の返済が進むと、「利益は出ているのに資金が減っている」という状況になります。
※詳細はお問い合わせください。以下、来月に続きます。

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