ふたば便り

利益とキャッシュはなぜ一致しないか(2)

 前回は「利益」と「キャッシュ(現金)」の違いと、ズレが生まれる主な原因についてご説明しましたが、今回はこのズレをめぐり、「利益は出ている(黒字)のに資金が足りない」状態の危険性と、こうした状況を防ぐための具体的な対策を見ていきましょう。

【利益は出ている(黒字)のに資金が足りないと何が起きるか?】
 前回ご説明したように、利益とキャッシュが一致しない以上、利益が出ているからキャッシュも安心とは限りません。
たとえば、次のような状況になっている会社が要注意です:
 ・売上の回収サイトが長いか、回収の滞っている取引先がある(売掛金の増加)
 ・在庫が膨らんでいる(販売不振)
 ・借入返済の負担が重たい(月々の元本返済が大きい)
 こうした企業は、利益の面では順調に見えても、実際のキャッシュフローは逼迫しており、資金ショート(資金が足りない状態)を引き起こす可能性があります。利益は出ている(黒字)のに資金が足りない状況は、最悪の場合「黒字倒産」につながる可能性があります。

【資金繰りを強くする4つの視点】

 資金繰りの悪化は、予防と改善の両方が必要です。以下の4つポイントを見ていきましょう。
① 売掛金の回収サイト短縮
 売上=キャッシュではないため、売掛金の回収サイトを短縮することで、キャッシュの改善につながります。たとえば、「月末締め翌月末払い」の条件を「月末締め翌月15日払い」に変えてもらうことが可能であれば、資金繰りは改善します。
② 支払いサイトの見直し
 支払いが先行している場合、仕入先との交渉によって支払い期限を後ろ倒しできないか検討するのも効果的です。例えば「現金払い」を「月末払い」に変えてもらう等です。
 上記①もそうですが、交渉の際は、信頼関係を前提に、資金計画等を提示しつつ慎重に行った方が良い結果を期待できると考えられます。
③ 在庫管理の徹底
 過剰在庫はキャッシュを消耗させる要因です。定期的な在庫の棚卸と、売れ筋商品の見直しが重要です。回転率の低い在庫は処分・値下げも検討し、在庫の保管コストや陳腐化リスクにも注意が必要です。
④ 資金繰り表の作成と更新
 「今月末にいくら現金が残るか」を常に把握するためには、資金繰り表の作成と更新が役立ちます。資金繰り表に、入金予定(売掛金など)、出金予定(仕入・人件費・借入返済など)、設備投資などの臨時支出等の項目を月次で記録し、3~6ヶ月先までの見通しを持つことが会社にとって有益です。資金が回らなくなれば、どれだけ成績(利益)が良くても企業は倒れてしまいます。日々の経営判断において、「この支出はキャッシュをどれくらい減らすのか」、「この売上はいつ入金されるのか」、そうした視点を持つだけで、会社の将来は大きく変わると言えます。

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