税務調査の概要と対策
多くの企業にとって「税務調査」は避けて通れない出来事の一つです。税務調査では企業の帳簿や書類が細かくチェックされるため、準備不足のまま臨むと余計な指摘や修正申告につながりかねません。そこで今回は税務調査の概要とよくある指摘事項及びその具体的な対策について見ていきましょう。
【税務調査とは】
税務調査は、税務署が会社の申告内容に誤りがないかを確認するために行う調査で、帳簿や領収書、通帳などをもとに、売上・経費の記録が正しいかをチェックします。中小企業に対して行われる調査の多くは、事前に連絡がある「任意調査」(※)です。税務調査は不正をしている疑いがなくても対象になりますので、経営者の方々にとっては、日頃からの記帳の正確さや書類の整理が調査対応のカギとなります。過度に恐れる必要はありませんが、備えは重要です。税務調査で特に指摘を受けやすい項目としては、主に以下のようなものがあります。 (※)任意とはいえ拒否することは事実上できません。
【よくある指摘事項とその対策】
● 売上の計上漏れや期ズレ
特に現金取引が多い業種では売上が帳簿に反映されていないケースもあるため、売上の計上漏れは重点的に確認されますし、本来計上すべき年度とは異なる年度に売上が計上されている「期ズレ」も指摘対象になりやすい項目です。年度末には計上漏れや期ズレがないかを必ず確認しましょう。
● 不適正な経費計上
翌期の費用を当期に前倒しする(期ズレ)、同じ支出を二重に計上する等のミスの他、交際費等の経費に役員の私的支出が混じる例もあり、注意が必要です。前倒しや二重計上、私的支出の混入がないよう日頃から注意し、交際費については支出の目的や参加者氏名等を記録しておきましょう。
● 棚卸資産の過少計上
期末の在庫計上漏れ等により棚卸資産が過少に計上されていると結果的に利益も過少となり、申告内容の誤りを指摘される可能性があります。期末の棚卸しをきちんと実行してない場合や、注文してからまだ届いていない商品(未着品)がある場合も計上漏れが起きやすいため、注意が必要です。
● 修繕費と固定資産
修繕費として費用計上されている項目の中に固定資産として計上すべきものがないかどうかも調査ではよくチェックされます。一般に、修繕によって使用可能期間が延長されたり価値の追加等があったりした場合には「資本的支出」として資産計上する必要があります。これは金額の大小によらず実質的内容で判断されますので、工事の見積明細等、内容が分かる資料を保存しておく必要があります。
● 役員報酬・貸付金の不明瞭な処理
勤務の実態に対して役員報酬が高額過ぎるとか、役員への貸付金について利息を計上していないことが問題になることもあります。また役員貸付金がその実態から賞与(経費になりません)と見られる可能性もありますので、そうした指摘を受けないよう、議事録や契約書、貸付金の返済計画等を整備しておくようにしましょう。
税務調査は「来てから慌てる」よりも「日頃から備えておく」ことが重要です。帳簿や証憑を整え、現金・預金を正確に管理し、適正な会計処理を心がけることで、調査に対しても自信を持って対応できるようになります。