税務調査に有効な事前準備
事業を営む全ての方にとって「税務調査」は決して他人事ではなく、不安に思われる方も多いと思います。ただ、税務調査は日頃から適切な準備をしていれば、過度に恐れる必要はありません。先月は税務調査の概要とよくある指摘事項及びその対策について確認しましたが、今月は税務調査の連絡が来た際の対応と事前準備について見ていきましょう。
【連絡が来たときに確認すべき事項】
税務調査の連絡(事前通知)は、調査開始の2~3週間ぐらい前までに、税務署の調査官から電話で入るのが一般的です。調査官が事前に通知すべき内容は法律により決められており、以下の7項目について通知することになっていますので、これらについては必ずメモを取るようにしましょう。
①調査の開始日時 ②調査を行う場所 ③調査の目的 ④調査対象税目 ⑤調査対象期間
⑥調査対象となる帳簿書類 ⑦調査対象会社や調査担当の調査官の氏名・所属部署
特に、⑤の調査対象期間が3年なのか5年なのかで準備の負担は大きく変わりますし、⑦の調査官の情報から、税務署がどの程度の調査を想定しているのかを推測できる場合もあります。顧問税理士がいる場合は、通常、税理士と会社の両方に連絡が入りますが、事前に税理士が「税務代理権限証書」という書類を提出していれば、連絡窓口を税理士に一本化することも可能です。
【調査日までにすべき具体的な準備】
● 書類の準備
調査対象期間の会計帳簿、自社で作成した請求書、仕入先からの請求書、領収証、給与台帳、預金通帳など、経理の根拠となる書類一式を準備します。そして、調査の作業が行われる会議室などに、前日までに移動させておきましょう。もし、調査時に要求された書類で準備し忘れたものがあっても慌てず、経理担当者の協力も得ながら用意しましょう。要求された書類の提出は大抵の場合、翌日以降であっても問題ありません。
● デスク周りの整理
税務調査では、社長や経理担当者のデスクの中を確認されることもあります 。見られたくない私物や、誤解を招きかねないメモなどがないか、事前に整理整頓しておくようにしましょう。
● パソコン内のデータ整理
最近では、電子データでやり取りした請求書等の保存が義務化されたこともあり、調査官がパソコンの中身を確認する機会も増えています 。デスクトップやフォルダ内を整理し、調査に関係のないファイルは移動させておくことをお勧めします。確認を求められた際は、調査官にパソコンの操作を任せるのではなく、ご自身でパソコンを操作するようにしましょう 。
● 金庫の中身の確認
小口現金などが入っている金庫がある場合はそれも重要な確認対象です。調査日時点の現金出納帳の残高と実際の現金有高とが一致しているかどうかは必ず確認しておきましょう。現金残高が帳簿と合っていると帳簿全体の信頼性が上がりますが、逆にそれが合っていないと、帳簿全体の信頼性が疑われることになりかねません。
税務調査対策は、特別なことではありません。日々の誠実な経理業務の積み重ねが何よりの対応策となりますので、日頃からしっかりと準備をしておきましょう。