決算書から読み解く自社の経営力① ~収益性編
自社の「経営力」を客観的に知るための指標にはいくつかありますが、代表的なものとして収益性(どのくらい儲ける力があるのか)と、生産性(ヒト・モノを活かしてどれだけ効率的に売上・利益を獲得できているか)を測る数字が挙げられます。これらの数字を調べるのに欠かせないのが決算書です。今回は、これらの数字のうち、収益性の数字を決算書から読み解く方法について見てみましょう。
収益性をチェックするには、決算書のなかの経常利益(※)と負債および純資産の合計額(≒資産合計)に着目します。これらの数字から導かれる総資本経常利益率が収益性を表します。この指標により、どれだけの資本(負債と純資産の合計)を事業に投入して、どれだけの経常利益を獲得できたのかということがわかります。この数値が高いほど少ない資本で多くの利益を獲得したことになり、つまりは収益性が高いと言えるのです。
(計算式) 総資本経常利益率=経常利益÷総資本(負債および純資産の合計額)×100
総資本経常利益率は収益性分析の入口とも呼ばれており、金融機関なども注目しています。もし前年と比較して数値が低下している場合には、その原因を究明した方がよいでしょう。次に挙げるポイントをチェックしてその原因を探ってみてください。
- 売掛金の回収が滞っていないか?
- 借入金が増加して、利息の支払いが増えていないか?
- 不要となった資産・設備(ゴルフ会員権、有価証券、老朽化した機械、遊休地)はないか?
- 貸付金・仮払金・立替金などが増えていないか?
- 販売数量、販売単価が下がっていないか?
- 仕入原価、仕入れコストが上がっていないか?
- 販売費および一般管理費などの固定費が増えていないか? など
(※) 経常利益とは?
会社の利益にはいくつかのものがあり、経常利益以外にも営業利益や当期純利益などがあります。経常利益と並んで会社の収益性を表す代表的な利益である営業利益は、売上高から仕入や固定費(人件費や材料費など)を差し引いて計算した利益で、本業での儲けを表します。
一方、経常利益とは、営業利益に本業以外の受取利息などの収益や支払利息などの費用(これらを営業外収益や営業外費用といいます)をプラスマイナスして計算します。本業とは直接関係ないものの、毎年発生するこうした項目も加味することで、本業以外の儲けも含めたその会社の収益性をより正確に表す利益として、こうした分析では重要な役割を持っています。
来月は、自社の生産性を決算書から読み解く方法についてお伝えします。一覧に戻る