役員報酬に関する税務上の注意点
2017年 5月号(Vol.177)
多くの3月決算企業では、前年度の業績を受けて社長を含む役員に支払う報酬を新年度から見直すことを検討していると思います。
役員が株主を兼ねる場合が多い中小企業では、役員の報酬金額を決める際、税務上注意したい点がいくつもあります。今月はこの役員報酬の取り扱いに係る注意点についてみていきましょう。
【役員報酬に係る税務上の注意点】
オーナー企業である中小企業の場合、会社の業績に合わせて社長や役員の報酬を増減させることが簡単ですから、これを自由に認めてしまうと会社の利益と税額を自由に調整することが可能となってしまいます。そこで税務上は、そうした行為による納税額の調整に制限を加えるため、役員報酬の金額の変更については一定の要件を満たしていないと変更した分の報酬を会社の経費として認めないと決められています。
【税務上、経費にできる役員報酬の条件】
一般的な中小企業の役員報酬が、税務上の経費として認められるのは主に次の①・②のいずれかの場合です。
①定期同額給与
毎月支給される役員報酬は同じ金額でなければなりません。ただしこの定期同額給与は、事業年度開始から3か月以内であれば、金額を改定することができます。
②事前確定届出給与
役員にボーナスを支給する場合は定期同額給与に該当しないので、通常は会社の経費として認められませんが、支給する時期・金額等をあらかじめ税務署に届け出ておけば、経費とすることができます。ただし、届け出た通りに支給しないと、経費として認められません。
これら以外にも社長の家族や親族が役員の場合、勤務実態と支給額が見合っておらず、不相当に高額であるとみなされると、その部分が経費として認められない可能性もありますので注意が必要です。
【平成29年度税制改正により「手取り」が同額の場合も経費として認められるようになりました】
これまでは支給する役員報酬の「額面」が同額でなければ定期同額給与になりませんでしたが、本年4月1日の改正により、額面から源泉所得税や個人住民税、社会保険料等を控除した後の「手取り」が同額の場合についても定期同額給与とみなされ、会社の経費として認められることになりました。
例えば事業年度途中に、住民税や社会保険料の金額が変更された場合には、各月の額面が同額でなくても、「手取り」が同額であれば経費として認められることになります。
役員報酬を改定する際にはこの他にも注意点が多くありますので、専門家ともよく相談して決めるようにしましょう。