利益とキャッシュの違い
2018年6月号(Vol.190)
3月決算の会社は5月末が申告と納税の期限でしたが、皆様の会社では今回どんな決算だったでしょうか? 多くの経営者の方々にとって利益は気になる数字だと思いますが、「キャッシュ」ベースでみた儲けを意識することは意外に少ないのではないでしょうか? そこで今月は利益とキャッシュの違いについてみていきましょう。
【利益とキャッシュの違い】
利益は売上から各種の経費を差し引いて計算されるもので、損益計算書をみれば利益は記載されています。一方のキャッシュ(現金預金)については損益計算書をみても記載されてませんし、貸借対照表をみても決算日時点でのキャッシュの残高はわかりますが、利益のように儲かったのかそうでなかったのか(キャッシュが増えたのか減ったのか)ということが決算書をみても一目ではわかりません。しかも、通常は
利益 ≠ キャッシュ
と、利益とキャッシュでみた儲けとは一致してませんので、利益が出て儲かっているはずなのに資金繰りは苦しいといったことが起こりがちです。利益とキャッシュが一致しない主な理由は次のとおりです。
・未入金の売上の存在(利益は増えますがキャッシュは増えない)
・未払いの経費の存在(利益は減りますがキャッシュは減らない)
・利益にならない現金収入の存在(例.借入金)
・経費にならない現金支出の存在(例.借入金の返済)
【資金繰りを悪化させる原因】
資金繰りが苦しくなる主な原因には、①売掛金・受取手形 ②商品在庫 ③固定資産 ④借入金 ⑤赤字 などがあります。
①の売掛金や受取手形による売上が増えると利益は増えますが未入金なのでキャッシュは増えません。したがって、これが増えれば増えるほど資金繰りは悪化します。もちろん、税金はキャッシュの残高ではなく利益をベースに計算されます。
②の商品在庫も仕入れるための支払いは済ませているのに、売れなければキャッシュになりませんから、これが増えれば増えるほど資金繰りは悪化します。
③の固定資産は一括払いで購入してもそれを経費とするには何年もかかりますから(減価償却)、やはりこれも多く持つほど資金繰りを悪化させます。
④の借入金は借入れをして現金が入金されても利益は増えないため税金はかかりませんが、返済するための支出ももちろん経費になりませんから、経営者の資金繰りの感覚を狂わせるものになります。借入をするかしないか、する場合にはいくら借り入れるかは経営判断になりますので安易に借入を減らすのがいいとは言えませんが、経費にならない支出があることを忘れないようにしましょう。
⑤の赤字は利益の赤字のことですが、短期的には「利益 ≠ キャッシュ」であっても、中長期的には利益とキャッシュは一致しますので、赤字はいずれ資金繰りを悪化させます。資金繰りを改善するためには税金を払ってでも利益を増やしていくのが王道と言えます。