30万円未満の減価償却資産の一括損金算入制度の注意点
2018年7月号(Vol.191)
平成30年度の税制改正により平成32(2020)年3月31日まで期限が延長された、30万円未満の減価償却資産を全額費用処理できる制度、「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」(以下、当制度)は、現在毎年度50万社以上が利用しています。(法人に限らず個人事業者にも同様の取扱いがあります。)非常に使い勝手の良い制度ですが、適用に当たっては注意すべき点もありますので、今月は当制度についてみていきましょう。
【当制度の概要】
当制度は、従業員数1,000人以下の青色申告法人である中小企業者等※が、取得価額30万円未満の減価償却資産で一定のもの(以下、少額減価償却資産)を取得するなどして事業の用に供した場合、適用を受ける事業年度においてその全額を費用とすることができる制度です。ただし、1年間で費用処理できる少額減価償却資産の取得価額の合計は300万円(事業年度が12ヶ月未満の場合には月数按分が必要)までで、それを超える金額については費用処理することはできません。
【当制度の適用を受けるためのポイント】
(1)青色申告法人であること
白色申告法人には適用がありません。
(2)適用できる金額に上限があること
取得価額30万円未満の減価償却資産(ソフトウェア等の無形減価償却資産、中古資産も対象)が対象となります。この「取得価額」の単位は、通常の減価償却資産の取得価額の判定と同じで、通常一単位として取引されるその単位ごとに判定されます。また、金額に消費税分を含めるか否かは、法人の経理処理に従います(税込経理なら税込金額、税抜経理なら税抜金額で判断)。
(3)他の特例と併用できないこと
研究開発税制を除き、他の租税特別措置法上の特例(圧縮記帳・特別償却・税額控除)との併用はできません。なお、他の法律の圧縮記帳では併用可能なケースもあります。
(4)経理処理や申告手続きを行うこと
適用を受けるためには、次の経理処理や手続きが必要です。
・事業の用に供した事業年度において、少額減価償却資産の取得価額に相当する金額につき、費用として経理処理(損金経理)すること
・申告の際に明細書(法人税申告書別表十六(七))を添付すること
(5)適用年度において「事業の用に供する」こと
「事業の用に供する」とは、本来の用途のために使用を開始することをいうので、代金の支払いは済んでいても品物が未到着の場合や、納品は済んでいても使用できる状態になっていない場合は「事業の用に供した」ことにならないため、当制度の適用ができないことにご注意ください。