ふたば便り

売掛金の管理と回収のポイント

2019年5月号(Vol.201

 企業にとって、売掛金(営業上の未収金)を遅滞なく回収し、不良債権化するのを防ぐことは重要です。今月はこの売掛金を管理する上での留意点と、もしも滞留してしまった場合に回収するための法的手続き等についてみていきましょう。

 

●売掛金管理の留意点

 売掛金とは、商品やサービスを販売又は提供し、一定期間経過した後の定められた日(支払期日)に代金を受け取る権利(債権)のことをいいます。例えば取引先との間で、商品を納品した月の翌月末日が支払期日という取り決めがある場合、販売した企業には取引先に対して、納品日から翌月末日までの間、売掛金があることになります。

 売掛金管理のためには、

 ①取引先別に売掛金台帳を作成し、前月からの繰越残高、当月の発生額・入金額、月末残高を遅滞なく把握する

 ②営業担当と経理担当が密に連絡を取る体制を作り、売上の計上漏れ・請求ミス・回収遅れを防ぐ等の方策が考えられます。

 売掛金の未回収が発生した場合、取引先に遅延の理由を確認し、いつまでに、どのように支払ってくれるのか確認する必要があります。請求の締め日や支払期日等、支払条件について取引先との間で認識のずれがあるかもしれませんし、こちらからの誤請求や請求書発行の遅延等、自社の不手際によって売掛金の回収が遅れる場合もあるため、売掛金の管理には注意が必要です。

 

●売掛金の消滅時効

 売掛金の滞留が続き、一定期間請求しないまま放置しておくと、消滅時効により、請求する権利が消滅する可能性があります(現行法では製造業・卸売業・小売業の売掛金は2年で時効)。

 時効を防ぐためには、時効の前に改めて売掛金を請求し、取引先に債務を承認してもらい「時効の中断」を図る必要があります。債務の承認書に署名捺印してもらう方法のほか、例えば一部の支払を受けるだけでも債務全体を承認したことになり、時効は中断します。

 

●法的手続きの検討

 取引先が債務を承認してくれない場合には、訴訟の提起等の法的手続きが必要になるかもしれません。もうすぐ時効で訴訟の提起が間に合わないような場合、配達証明付きの内容証明郵便で支払請求をすれば、時効の成立を先延ばしできます。

 なお、売掛金回収のための法的手続きで、費用が少額で済むものとしては支払督促少額訴訟がありますが、法的手続きは取引先との関係悪化を招く危険性が高いため、実行する場合には慎重な判断が必要となります。いずれにしても、こうした手続きを検討せざるをえない場合には法律の専門家にご確認ください。

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