企業の賃上げ等を支援する税制のあらまし
新型コロナウイルスの影響により雇用環境が悪化する中、雇用を守り、個人消費の原資となる雇用者の所得を下支えする目的で、令和3年度税制改正により、中小企業向けの「所得拡大促進税制」は適用要件が一部見直し・簡素化され、また、大企業向けの賃上げ税制は外部人材の獲得を促進する「人材確保等促進税制」になっています。なお、これらは令和4年度税制改正により来年度には「賃上げ促進税制」となります。今月はこれらの優遇税制の概要についてご紹介しましょう(令和4年4月27日現在)。
【中小企業向け】(従業員数1,000人以下の個人事業主等も対象)
所得拡大促進税制(令和3年度改正後:令和3年4月1日から令和4年3月31日までに開始する事業年度)
青色申告の中小企業者等(資本金1億円以下の普通法人等)が、従業員に対し支払った給与等支給総額(企業全体の給与)が前年度比で1.5%以上増加している場合、給与等支給額の増加額の15%の税額控除(法人税額の20%が上限、以下同)が可能となります。更に、給与等支給総額が前年度比で2.5%以上増加し、教育訓練費の額が前年度と比べて10%以上増加している等の一定の要件を満たす場合には、10%の税額控除が上乗せされます(最大で支給増加額の25%の税額控除)。
※ 所得税も同様。なお、実際の適用に当っては、出向者給与負担金等を差し引いて計算する等、より細かい規定があります。
賃上げ促進税制(令和4年度改正後:令和4年4月1日から令和6年3月31日までに開始する各事業年度)
上記の所得拡大促進税制と同様に、青色申告の中小企業者等の、従業員に対する給与等支給総額が前年度比で1.5%以上増加している場合、給与等支給額の増加額の15%の税額控除が可能ですが、前年度比で2.5%以上増加している場合には増加額の30%の税額控除が可能となります。更に教育訓練費の増加等の一定の要件を満たす場合には、10%の税額控除が上乗せされます(最大で支給増加額の40%の税額控除)。
【大企業向け】(資本金1億円超の企業等)
人材確保等促進税制(令和3年度改正後:令和3年4月1日から令和4年3月31日までに開始する事業年度)
青色申告法人の新規雇用者(新卒・中途)給与等支給額が前年度比で2%以上増加している場合、新規雇用者給与等支給額の15%の税額控除(法人税額の20%が上限、以下同)が可能になります。更に、教育訓練費の額が前年度と比べて20%以上増加している場合には、5%の税額控除が上乗せされます(最大で新規雇用者給与等支給額の20%の税額控除)。
賃上げ促進税制(令和4年度改正後:令和4年4月1日から令和6年3月31日までに開始する各事業年度)
青色申告法人の継続雇用者給与等支給額★1が前年度比3%以上増加している場合は給与等支給額(企業全体の給与)の増加額の15%の税額控除、4%以上増加している場合は給与等支給額の増加額の25%の税額控除が可能です。更に、教育訓練費の額が前年度と比べて20%以上増加している場合には、5%の税額控除が上乗せされます(最大で支給増加額の30%の税額控除)。
★1 継続雇用者(前年度の期首から適用年度の期末までの全ての月分の給与等の支給を受けた従業員のうち、一定の者)に支払った給与等の総額。