ふたば便り

役員報酬の改定について

3月決算企業は5月末が法人税等の申告期限でしたが、今回の決算を受けて社長を含む役員に支払う報酬を新年度から見直すことを検討しているところも多いと思います。新型コロナウィルスの影響などから、報酬の減額を検討しているところもあれば逆に増額を検討しているところもあるかもしれません。役員と株主が同一人物であるケースが多い中小企業では、役員の報酬金額を決める際、税務上、留意すべき点がいくつかあります。今月はこの役員報酬の取り扱いについてみていきましょう。

 

【役員報酬に係る税務上の注意点】

オーナー企業である中小企業の場合、会社の業績に合わせて社長や役員の報酬を増減させることが簡単ですから、これを自由に認めてしまうと会社の利益と税額を自由に調整することが可能となってしまいます。そこで税務上は、そうした行為による納税額の調整に制限を加えるため、役員報酬の金額の変更については、増額する場合はもちろん、減額する場合であっても一定の要件を満たしていないと変更した報酬を会社の経費として認めないと決められています(したがって、会社の経費にならない(=税金で損をする)ことを覚悟の上で増減させること自体はもちろん可能です)。

 

【税務上、経費にできる役員報酬の条件】

一般的な中小企業の役員報酬が税務上の経費として認められるのは、主に次の1)・2)のいずれかの場合です。

1)定期同額給与

毎月支給される役員報酬は同じ金額でなければなりません。ただしこの定期同額給与は、事業年度開始から3か月以内であれば、金額を改定することができます(3月決算であれば6月までに改定)。

2)事前確定届出給与

役員にボーナスを支給する場合は上記①の定期同額給与に該当しないので、通常は会社の経費として認められませんが、支給する時期・金額等をあらかじめ税務署に届け出ておけば、経費とすることができます。ただし、届け出た金額通りに支給しないと、経費として認められません。

これら以外にも、社長の家族や親族が役員の場合、勤務実態と支給額が見合っておらず、不相当に高額であるとみなされると、その部分が経費として認められない可能性もありますので注意が必要です。

また上記の趣旨から、期首から3か月以内の時期以外で役員報酬を改定した場合には、それがたとえ役員報酬を減額する場合であっても、原則として報酬の一部が会社の経費として認められませんが、会社の業績が悪化するなど一定の事由に該当する場合は減額については認められる場合もあります。たとえば今回の新型コロナウィルスの影響で会社の業績が著しく悪化し、家賃や従業員の給与支払いも困難になるなど、期の途中で役員報酬を減額せざるをえない場合には、減額に正当な事由があるものとして認められる可能性があります。なお、役員が将来退職金を受け取る予定になっている場合には、役員報酬の減額によって、当該退職金の税務上の限度額も減額になる可能性がありますので注意が必要です。

役員報酬を改定する際には様々な注意点がありますので、事前にご相談いただくようお願いいたします。

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