ふたば便り

会社の株を後継者に渡すときの注意点

中小企業経営者が引退する際には、代表者としての地位とともに、所有する自社の株式を後継者に渡すのが一般的です。後継者が身内か、それとも従業員など身内以外の第三者かによって渡す方法は異なりますが、贈与か売買、相続のいずれかによって渡すことになります。いずれのパターンでも、株式を渡す時点での株式の時価(評価額)が税務上は重要になってきますので、今月はそうした株式譲渡の方法や注意点についてみていきましょう。

【株式譲渡】

会社で最も強い権限を持っているのは社長(代表取締役)ではなく株主ですから、株式を譲渡することは、会社を後継者に引き継がせるという意味で重要な手続きになります。

株式譲渡には大きく次の3つのパターンがあり、それぞれの特性は下の通りです。

  • 贈与 …現経営者が存命のうちに後継者に無償で株式を譲渡する方法
  • 相続 …現経営者の死亡によって相続人である後継者が株式を無償で取得する方法

現経営者と後継者が親子であるなど親族関係がある場合、株式譲渡には通常①又は②が使われます。後継者は株式取得のための代金を用意する必要がない一方、①の場合は贈与税、②の場合は相続税を負担する可能性があります。一般に、相続税の方が贈与税よりも税額が低くなる傾向がありますが、相続は株式譲渡のタイミングを自分で決められない、等のデメリットもあります。

  • 売買 …後継者がお金を支払うこと(有償)で株式を取得する方法

後継者が現経営者の親族以外の場合に通常使われる方法です。対価のやり取りがあるため、現経営者にとっては所有する株式を現金化できるというメリットがありますが、後継者は株式の購入資金を用意する必要があり、金銭負担が大きくなる可能性があります。

 

【株式の時価(評価額)】

株式の贈与又は相続が行われるとき、それが非上場株式である場合は、その税務上の時価(相続税評価額)に基づいて受け取る側に贈与税又は相続税が課税されることになります。

個人が非上場株式を有償で売買するときは、原則として売り手側に株式の売却価格と取得価格との差額(売却益)に対して所得税が課税されますが、税務上の適正な時価よりも低い価格や高い価格で取引した場合には、時価との差額について、買い手又は売り手が、経済的利益の贈与を受けたものとみなされて(みなし贈与)贈与税がかかることがあります。

税務上の時価の評価方法を定めた「財産評価基本通達」では、非上場株式の評価方法として、類似業種比準方式純資産価額方式配当還元方式の3つを定めており、株式を取得した人の持ち株割合や、評価する会社の規模等に応じて、選択できる評価方法が決められています。

なお、株式譲渡を行うには、上記3パターンのいずれかの方法やそれらを組み合わせて行う等いろいろな方法をとることが可能であり、方法に応じて株式取得の際に負担する資金や税金の金額が変わってきます。また、都道府県知事の認定を受けた上で後継者が贈与又は相続で取得した非上場株式に課税される贈与税又は相続税の納付を猶予する制度(事業承継税制)もありますが、そうした制度の利用にはさまざまな要件がありますので、詳しくはお問合せください。

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