令和6年度税制改正の留意点
今年1月にもお伝えした国税・地方税の令和6年度税制改正関連法案が、3月28日の参議院本会議で可決され、成立しました。この税制改正は原則として4月1日から施行されていますが、今回はその中でも中小企業に関係が深い項目の一部に関する留意点について見ていきましょう。
【交際費等の損金不算入制度の見直しと期限延長】
法人が支出する交際費等には一部又は全額が損金不算入(経費として認められない)となる取扱いがありますが、この交際費等に含めなくてもいい接待飲食費に係る金額基準が、令和6年4月1日以後に支出するものについては、1人当たり1万円以下(現行:5千円以下)に引き上げられました。
また、接待飲食費に係る損金算入の特例(支出額の50%が損金算入可)及び中小企業等に係る損金算入の特例(年800万円まで損金算入可)の適用期限は3年延長されました(令和9年3月末までに開始する各事業年度)。
※その他、詳細はお問合せください(以下同様)。
【中小企業向け賃上げ促進税制の繰越控除制度】
中小企業向けの賃上げ促進税制(給与等の支給額が増加した場合の税額控除制度)について、これまで法人税等が発生しないためこの税制を活用できなかった赤字の中小企業にも、賃上げのインセンティブとなるように、新たに繰越控除制度が創設されました。これは中小企業が要件を満たす賃上げ等を実施した年度に納税額から控除しきれなかった金額を5年間繰越し可能とする制度です(令和6年4月1日~令和9年3月末までに開始する各事業年度が対象)。ただし、繰越控除をする事業年度において、給与等の支給額が前年度より増加している場合に限って適用となります。
【定額減税の控除対象者】
令和6年分の所得税及び個人住民税について、定額減税(定額による税額の特別控除)が実施されることになりました。合計所得金額が1805万円以下(給与収入のみの場合、給与収入が2000万円以下。例外あり)の居住者※11人につき、所得税額から3万円、個人住民税(の所得割額)から1万円の定額減税額が控除されます。
※1 居住者…日本国内に住所を有している人又は現在まで引き続いて1年以上日本国内に住んでいる人
給与所得者に対する所得税の定額減税は、給与の支払者が、令和6年6月1日以後最初に支払う給与等(賞与を含む)につき源泉徴収される所得税等から定額減税額を控除する方法で行われますが、給与を支給される本人だけでなく、その同一生計配偶者及び扶養親族の分も控除することになるので、給与の支払者は事前に各雇用者の控除対象人数の確認が必要となります。
控除の対象となる同一生計配偶者及び扶養親族は、いずれも合計所得金額が48万円以下(給与収入のみの場合、給与収入が103万円以下)の居住者※1で、16歳未満の扶養親族も含みますので、毎月の源泉徴収税額の計算をする際に扶養親族(配偶者含む)の人数としている人数と異なる場合がありますので、ご注意ください。
なお、個人住民税の定額減税については、給与所得者の場合、令和6年6月分の住民税が特別徴収されず、定額減税「後」の税額が令和6年7月分~令和7年5月分の11か月で月割して徴収されます。