外注費と給与の違い(1)
外部の企業や個人事業主に業務を委託する場合は支払った対価を「外注費」とすることができますが、人件費削減のために業務の外注化を検討する企業もあるようです。ところが、外注費として計上した経費が税務調査で給与と認定され、消費税や源泉所得税等を追徴課税されてしまう場合があります。そこで今回は、外注費と給与の違いと、外注費を計上する際の留意点について見ていきたいと思います。
【外注費と給与】
外注費は、外部企業や個人事業主に対する「業務の完了をもって支払われる対価」であり、事務系の仕事であれば給与計算の外部委託等、建設業であればいわゆる一人親方への作業の委託等がこれに該当します。性質的に、従事するだけで対価が支払われる訳ではなく、成果を納めることによって対価が支払われる形になります。報酬は個人事業主の場合、事業所得となります。
一方、給与は雇用者に対する「労働の対価」であり、雇用主から受けた指示・命令に従事することによって支払われます。性質的に、成果物や結果に対する支払いではなく、従事することに対しての支払いとなります。支払いを受ける雇用者にとっては給与所得となります。
【外注費と給与の税務上の取扱いの違い】
① 消費税の課税仕入れの可否
給与は消費税の課税対象外となるため消費税の申告に当たり仕入税額控除(払った分の消費税を差し引くこと)ができず消費税の納税額が増える一方、外注費は消費税の課税取引になり、仕入税額控除ができるため、消費税の納税額が少なくなります。
② 源泉徴収の要否
給与の支払者は支払う給与から所得税を源泉徴収して国に納める義務があります。これに対し、外注費は弁護士や税理士、デザイナー、講師など※一部のものを除いて源泉徴収義務がありませんので、①の消費税と合わせて納税者の側からすると給与よりも外注費のほうが税務的には有利な取り扱いとなっています。 ※詳しくはお問合せください。
【外注費が給与認定されないようにするためには】
税務調査でしばしば問題になるのは、外注費として処理した費用が、その形態や実態からみて外注費ではなく給与であると指摘される点です。外注費が給与認定されると消費税や源泉所得税で不利な扱いを受けるのは上記のとおりですし、更に過少申告加算税や不納付加算税、延滞税等も課税される可能性があります。外注費が給与と認定されないためには次のような点に留意する必要があります。
(1) 請負契約書等を取り交わし、雇用契約ではないことを明らかにする
(2) 外注先としての業務実態を整える
もちろん、実態が給与であるにもかかわらず外注費として取り繕うのは問題外ですが、外注費なのか給与なのかは、基本的には契約内容(請負契約か雇用契約か)によって判断され、税務上はこれに業務実態を加えて総合的に判断をします。その判定基準は国税庁から例示されていますので、次回はそれについて解説いたします。