外注費と給与の違い(2)
前回7月号で、外部の企業や個人事業主に支払う「外注費」と雇用者に支払う「給与」がどのような点で違うのか、外注費を計上する際にはどのような点に留意したらよいのか説明しましたが、今回は、税務調査で給与と認定され、消費税や源泉所得税等を追徴課税されないようにするためにはどうしたらよいのか、その判定基準を中心に見ていきたいと思います。
【外注費と給与は税務上の扱いがどう違うのか】
前回説明した通り、外注費は消費税の課税取引になり、外注費を支払った側が消費税の申告を行う際には仕入税額控除(支払った分の消費税を納税額から差し引くこと)ができますが、給与は課税対象外となるため、給与を支払った側は仕入税額控除ができず、同じ金額を支払ったとしても、外注費と比べて給与の方が消費税の納税額が増えることになります※。
※ 消費税を本則課税で申告・納税する場合。詳しくはお問合せください(以下同様)。
また、外注費は一部のもの(弁護士や税理士、デザイナー、講師など)を除いて、支払う際に源泉徴収義務がありませんが、給与の場合は、給与の支払額に応じて、所得税を源泉徴収して国に納める義務があります。
【外注費か給与かを判定する4つの基準】
国税庁は、税務当局内部に対する実務上の指針として、以下の4つの判定基準を例示し、個人事業者に対する外注費か、それとも給与所得者に対する給与かを判定する場合には、これらの事項を総合勘案して判定することとしています(消費税基本通達1-1-1)。
(1) その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか
(2) 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか
(3) まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか
(4) 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか
(1)は、その仕事をしている人が別な人に替わってもいいかどうかで、契約者本人でなく別な人が仕事に従事してもよいのであれば、外注費としての判定にプラスとなります。
(2)は、仕事をするに当たって依頼主(事業者)からの指図を受けるかどうかで、個々の作業について指図を受けずに自由な裁量で仕事を進めることができるなら、外注費判定にプラスです。
(3)は、引渡しの終っていない完成品が、例えば災害等で滅失して納品できなくても対価の支払を受けられるかどうかで、成果物の引渡しが無ければ報酬も無いなら、外注費判定にプラスです。
(4)は、仕事に必要な材料や道具等の支給を受けているかどうかで、そうしたものを自分で準備して仕事をするのであれば、概して外注費としての判定にプラスとなります。
実際には、こうした判断基準に基づきつつ、更にさまざまな業務実態を勘案して総合的に判断します(例えば社会保険の負担の有無等)。判定が非常に難しい場合が多々ありますので、判定に迷った場合はお問合せください。