西俊輔の「毎日楽しく」

2015年10月号 Vol.122

ここ一か月ぐらいの間、日本の集団的自衛権行使を盛り込んだ安全保障関連法に係るニュースが連日、新聞やテレビで報道されていました。結局は与党の賛成多数で可決され、法律としては成立しましたが、そこに至るまでの混乱ぶりはみなさんもよくご存知のとおりです。

ただ、みなさん、今回の法律の是非について、正確な判断って本当にできますか?
私自身はというと、いいのか悪いのかわからない、というのが実は正直なところです。今回の法律が成立したことで、自衛隊員がこれまでより危険になるのはどうやら間違いなさそうです。また、ひょっとしたら、日本人がテロの標的にされたり、場合によっては日本国内でテロが起きるなんてことが今後はあるかもしれません。

なにより、戦後70年間、戦争を放棄してきた日本がまた戦争に巻き込まれることになってしまうかもしれず、そういった側面に注目するなら、今回の法律はもちろんいいとは言いづらいものです。

今回の法律が憲法違反であると言う憲法学者が多くいる点も大きな問題になるかもしれません。為政者が憲法の解釈を自由に変えることができてしまっては、憲法の存在意義が無くなり民主国家とは言えなくなってしまうからです。今回の法律に対して厳しい論調のマスコミや専門家、あるいは国会前でデモをしていた多くの人たちの意見はおおよそこういった点を問題視しているのだと思います。

一方、今回の法律に賛成している人の意見の中には、隣国の軍事的脅威は実は私たちが想像している以上に高まっているのに、いざその脅威が現実のものとなったときに、今のままでは日本を守ってくれるはずのアメリカは実際には守ってくれないからこそ、アメリカに守ってもらう代わりにアメリカを守ってあげる集団的自衛権が必要なんだというものもあります。より深刻で大きな犠牲を払わないためにも多少の犠牲はやむをえないというわけです。

私がわからないのは、有事の際、もしもアメリカが日本を守ってくれないとしたら、隣国の軍事的脅威がどの程度現実的なものになるのか、という点です。そうしたさまざまな可能性がどの程度高いのかを政府では情報として持っているのでしょうけど、一般の国民には知る由もありません。

より多くの少しでも正確な情報がないと正しい判断を下せないのは会社経営でも同じですが、木を見て森を見ず、という状態にならないためには、より多くの視点からものごとを見るような意識が必要なのかもしれません。

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