西俊輔の「毎日楽しく」

2018年9月号(Vol.157)

「加藤の乱」といっても、20代ぐらいの若い人たちには何のことだかわからないかもしれませんね。今から18年ほど前の平成12年(2000年)、当時、自民党の国会議員で自民党の幹事長も務め、「次の総理大臣に最も近い男」といわれていた加藤紘一さん(2016年に亡くなってます)が同じ自民党の森首相(当時。現在は2020年東京オリンピックの組織委員長です)に反旗を翻して森政権を倒そうと「乱」を起こしたものの、結果的には「鎮圧」されて、それ以後、加藤さんが表舞台から退くきっかけになった事件のことを俗にこう呼んでいるそうです。あの当時、加藤さんを支えていた同じく自民党の国会議員だった谷垣禎一さんが加藤さんの腕をつかみ、「あんたは大将なんだから」と泣きながら加藤さんを止める姿がテレビ映像で流れましたが、きっと覚えている方も多いですよね。 

 この「加藤の乱」ではマスコミなどであまり報道されてなかったように思いますが、加藤さんは当時の国会議員としては珍しかった携帯電話(ガラケー)を駆使し、これまた当時としては珍しかったインターネット上での情報発信を積極的に行うなど、現在のネット政治のさきがけとなった人らしいですよね。ただ当時は、ネットごときに重要な情報を発信するとは何ごとだ、といった同僚議員たちの反発を受けて多くの議員の支援を得られず「乱」が成功しなかったという側面もあり、日本の政治家の方々の間ではその後長く、インターネットの活用に拒否反応が残り、特に日本の政治家によるネット活用が世界に比べて10年は遅れた、という見方もあるんだそうです。いまや、政治家の方々のネット活用はあたりまえで、アメリカ大統領にいたっては、そんなことまで書いてしまって大丈夫? ということをツイッターに書き込んでますし、そもそもトランプさんが大統領に当選したのはネットの力が大きかったとも言われてますが、現在ではそれぐらいネットの活用が大きな影響力を持ち、一般的なものとして定着しています。 

 ものごとには「時流」というものがあって、その時々の傾向や風潮に合ったものでないと、どんなにすぐれたビジネスモデルであってもうまくいかないことがある、ということはビジネスの世界ではよく言われることです。加藤さんはそういう意味では「早過ぎた」方だったのかもしれませんが、あらためて私たちのビジネスも時流に合ったものかどうか、常に考える必要がありそうですよね。

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