西俊輔の「毎日楽しく」

何が本当なのかを判断するのは実はけっこう難しい|2021年2月号(Vo.186)

4年間続いた(4年間で終わってくれた)アメリカのトランプ政権が先月20日にバイデン政権へと変わりました。大統領選挙に不正があったとして、トランプさんは選挙結果を受け入れず、裁判で争う姿勢をみせて当初は政権の引き継ぎにも非協力的でしたからどうなることかと思いましたが、とりあえずは規定どおり移行されました。次の大統領の就任式に現職大統領が出席しなかったのは152年ぶりだったそうですけどね・・・。

それにしても、政権移行直前に起きたアメリカの連邦議会議事堂にトランプさんの支持者たちが乱入する映像には驚きましたね。議事堂の壁に大勢の人がよじ登り、窓を割って乱入していましたが、日本でいえば、国会議事堂に大勢の暴徒が乱入するようなものです。政情不安な発展途上国ならまだしも、現在のアメリカで起きているという事実がにわかには信じられませんでした。世界の民主主義国家のリーダー国で起きたこの事件はアメリカの歴史に大きな汚点を残したと言われ、ヨーロッパの国々もただちにこれを非難しましたし、中国やロシアなどの社会主義国からは、西側のリーダーが世界に恥をさらし、民主主義は終わったなんて言われる始末・・・。日本のことではないのに、なんだか恥ずかしさを感じてしまったのは私だけでしょうか・・・?

もちろん、議会に乱入したような人たちがトランプさんの支持者の多くを代表しているとは限りませんし、今回の事件にとらわれず長期的な視点に立ったとき、トランプさんの退任とバイデンさんの就任が世界にとって良いことだったのかどうかも現時点ではわかりません。特に日本にとっては、太平洋戦争で戦ったときのアメリカが民主党政権だったことや、比較的日本に厳しい態度を取ると言われる民主党政権よりも、日本は伝統的に共和党(トランプさん側)との相性の方がいいなんて言われることもありますしね(もちろんこれも複雑な政治情勢の中で単純に言えることではありません)。

今回の議事堂襲撃事件や、何の証拠もなしに大統領選挙に不正があったとインタビューに答えるアメリカ国民の姿をみると、なんだか、洗脳された新興宗教団体の信者とイメージが重なることもあり、日本で過去に起きたオウム真理教の事件やさらには第二次世界大戦時のナチスドイツを思い出してしまうこともありました。

誰もが簡単に世界に対して情報発信できるSNSや、AIによって本物かどうか見分けがつかないディープフェイクなどの技術によって、私たちは今後ますます、何が本当のことかわからない世の中で生きていくことになるのかもしれません。自分が今信じていることや知っていることのすべてが、なんのバイアスもかかっておらず、わずかな洗脳も受けてないと言い切るのは、実はすでに難しいことなのかもしれませんね。

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