西俊輔の「毎日楽しく」

もしトラのリスク

 雑誌で最近よく目にしたり、テレビなどでもよく聞く「もしトラ」という言葉はみなさんも聞いたことがありますよね?

 今年の11月に行われるアメリカの大統領選挙で、「もしもトランプさんが大統領に再選したら」を略した言葉だそうで、もしもトランプさんが再選すると世界ではさまざまなリスクが顕在化する、と言われています。たとえばつい最近もアメリカ国内で開かれたある集会でトランプさんは、「必要な軍事費を支払わないNATO加盟国がロシアに侵略されたとしてもアメリカは守らないし、ロシアにはやりたいようにやればいいと言う」と発言して大問題になりました。アメリカも加盟するNATO(北大西洋条約機構)は、加盟するどこか1か国でも他の国に攻撃された場合には、全加盟国は自国が攻撃されたものとみなして反撃するという集団的自衛権の考え方を中核とする組織ですから、トランプさんのこの発言が問題になったのは当然です。

 また、開戦してからもう2年にもなるロシアによるウクライナ侵攻ですが、これもトランプさんが大統領になったら、ウクライナに対するアメリカの軍事的支援は打ち切られると言われてますから、ウクライナの敗戦という形で戦争はすぐに終わるかもしれません。ただ、先のNATOに対するトランプさんの発言と合わせてこの結果をみたヨーロッパ各国は自国防衛のために軍事費を増加させ、ヨーロッパ経済が停滞する可能性もあると言われてるそうです。もちろん、ロシアや中国があらたな軍事侵攻に出る可能性も否定できないようですし、日本に対してもアメリカ軍の駐留経費の大幅増額を要請した「前科」があるトランプさんですから、それを了承しないならアメリカは日本を守らない、と言いかねません。

 また、トランプさんは地球温暖化にも否定的なようですから、自動車のEV化といった脱炭素投資が無駄になる可能性もあります。さらには、アメリカの利益を最優先するトランプさんの「自国第一主義」によって世界各地で地域紛争が激化し、現在も続いているイスラエルとハマスの紛争が拡大して中東戦争なんてことにでもなれば、1970年代に日本も経験したオイルショックによるとんでもないインフレなんて悪夢が再来するかもしれません。 

 これだけ世界中が戦々恐々としているトランプさんがアメリカ国内では絶大な人気があることにも驚きですが、たった一人の指導者によって国同士の約束が簡単に反故になったり、世界の情勢が変わってしまうことが、あらためて怖いなと思いました。第二次世界大戦が終わって約80年、日本はここまで幸いにも平和な時代を過ごしてきましたが、この先も平和が続いてくれることを願わずにはいられません。

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