西俊輔の「毎日楽しく」

インボイスで休廃業が増えた意外な業種

 帝国データバンクが公表した、昨年1年間に休業や廃業した事業者の中で、一昨年と比べた増加率で最も多かったのが意外な業種だったということで話題になりました。その業種というのは、なんと税理士事務所。

 休廃業の理由は業績不振や後継者不在などもちろん様々ですが(これは全業種を通じた理由ですが)、税理士事務所が休廃業する理由のひとつとして挙げられていたインボイス制度の導入という点が特に意外だったようです。インボイス制度は消費税に係る制度で、税理士事務所はそれを支援する側ですからね。インボイス制度の詳細は弊社の過去の「ふたば便り」などをご覧いただくとして、この制度の問題点をあらためて確認しておくと、システム改修などでビジネスチャンスが増えた業種を除き、ほとんどの事業者でインボイスに対応するための手間とコストが増えたこと、そして、これまで消費税の納税を免除されていた小規模零細業者に消費税の納税を促す(ほぼ強制する)ことになるというのが問題点でした。 

 なので当然、支援する側である税理士事務所にとってインボイス制度はビジネスチャンスと考えられなくもないんですが、実際には、やり方によってかなりの手間隙がかかるにもかかわらず、それを報酬に転嫁することができず、忙しさだけが増えてしまうとか(これは一般の小規模零細企業も同じですね)、そもそも新しい制度ですから、特に代表者が高齢の事務所だと対応そのものが厳しい、あるいは、これまで消費税の納税が免除されていたような零細事務所だと、事実上、納税が増えてしまうのでこれを機に廃業してしまう(これも一般の小規模零細企業と同じです)ということがあるようです。

 ただ、税理士事務所の休廃業の増加率が2.7倍(170%増)となって、調査した全業種の中で最も多かった、ということなんですが、実はこの数字、一昨年の休廃業が30件だったのが昨年は81件になったというのがその根拠になってまして、母数がすごく少ないんです。数字を扱うお仕事をしてる人ならわかると思いますが、30件とか80件といった小さい数だと、「割合」とか「率」というのはすぐに大きく変動しちゃいますから、そこは考慮してこの結果を見なければなりませんけどね。

 インボイスが休廃業の理由のひとつとはいっても、もっとも多い理由はやはり後継者不在のまま代表者が高齢化している、ということだと考えれられてますが、いずれにしても、業種を問わず、今後ますます事業者の数は減っていきそうです。

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