西俊輔の「毎日楽しく」

ご自由にお持ち帰りくださいで窃盗?

先日の新聞でこんな記事を見かけました。ある銀行で副店長(肩書は記事のまま)を務めていた女性が、携帯電話ショップの店頭で「おひとり様1個ご自由にお取りください」という案内とともに置かれていた販促物(小分けされた洗剤)を持っていったところ、後日、携帯ショップからの苦情を受けた銀行側がこの女性の行為を「窃盗」に当たるとして懲戒解雇したというものです。これを受けて女性は懲戒解雇は不当として東京地裁に提訴しましたが、今年の3月に出た地裁の判決では、女性の行為は「窃盗罪に該当しうる」というものでした。

ポイントは2つありました。まず、この女性は携帯ショップの営業が開始される前にこの販促物を持ち帰っていました(営業時間外でも通行人が手に取れる場所に販促物が置いてあったんですね)。それと、女性は1日1個を連日持ち帰り、合計で11個を持ち帰っていたそうです。これを受けて銀行側では「1人1個」というのは「1日1個」という意味ではなく、「配布期間中を通じて1人1個」と考えるべきだと主張したそうで、地裁も、店頭に販促物を置く目的は商品などへの興味関心を引いて店頭に足を向けてもらって商品の購入につなげることだから、営業時間外に販促物を持ち帰った女性の行為は窃盗罪に該当しうるというものでした。

窃盗罪というのは他人の所有物をその人の意思に反して自分の占有下に置いた場合に成立する罪だそうで、女性のこの行為が携帯ショップの意思に反して行われたといえるかどうかが問題だったようですが、結論として、女性の行為は携帯ショップの意思に反していたと認定されたわけです。なお、地裁の判決では、女性の行為は窃盗罪に当たるけれども、販促物がそれほど高価なものではないことなどから、銀行側の懲戒解雇という処分は重すぎるとして、懲戒解雇自体は無効という判決だったそうです。

 これはもう、法律うんぬんの前に個人の常識(?)の問題になっちゃうんでしょうけど、私自身はというと、たとえばシャッターが閉まってるショップの店頭に置かれた「ご自由にどうぞ」という販促物を持ち帰るのはちょっと気が引けるのと、ましてや、それを10日間以上連続で毎日持ち帰るのはさらに気が引けるんですけど、みなさんはいかがですか? もし、「え? それの何が悪いの?」という方は、窃盗罪に問われる可能性もありますから、くれぐれもご注意を・・・

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