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本当にあった怖い話2019

2019年09月06日


これは私が体験した実話である。

2年前に引っ越しをしてひとり暮らしを始めてからというものの、私は真剣に家のセキュリティについて考えるようになった。私が不在にしているときは、そこから導かれる至極単純な帰結として家は無防備状態になっているわけで、心配性の私はそのことへの焦燥感を感じていたのである。

ホームセキュリティにお願いすればいいか、とも考えたが私のような身分が契約料を払っていけるほど安くはない。結局、懐事情を勘案してスマートロックを導入することにした。テクノロジーとしての興味もあった。

スマートロックとは、鍵の上にそれより一回り大きい機械を被せて、自動的に鍵を回す仕組みを指す。これにより鍵の開け締めはすべて記録され、スマホやスマートウォッチにその都度通知が飛ぶようになっている。たとえば普通に手で施錠したら「手動で施錠しました」、家路につく途中、ある程度近づいたら「解錠の準備ができました」といった具合だ。これによって誰かが(あくまでもドアからの侵入に限られるが)家に入るために鍵を回したなら、すぐにわかるようにしたのである。

導入してからしばらくして、その事件は起こった。

家から何キロも離れた会社の事務所で仕事をしていたある日の午前、腕時計がブルッと震えた。通知がきたのだ。反射的に通知の内容を確認するや、その内容に心臓が止まるかと思った。

「ドアが手動にて解錠されました」

全身に悪寒が走る。ありえない。だれかが我が家のドアを解錠したというのだ。しかし勤務中ゆえどうすることもできない。いや今すぐ戻るべきか。

そんななかば混乱状態で、とりあえず現在の鍵の状態をちゃんと確認しようと思った。確認は専用アプリでできる。

「解錠」

間違いない。いまこの瞬間我が家のドアは開いている。どうしよう。警察に連絡すべきか。しかし間違いだったらそれこそ大事だ。どうしよう。いや待てよ。本当に誰かが開けたのだろうか。ここでちょっと冷静になって考えてみる。

そもそも我が家のドアには2つ鍵が付いている。しかもその2つともディンプルキーだ。ディンプルキーとは鍵突破がもっとも困難とされるタイプである。開いているのは2つのうち1つだけだ。これはもしかしたらスマートロックの誤作動ではないか。その後しばらく鍵の状態を監視してみるも、やはり2つ目の鍵は解錠にならない。もし誰かが1つ目の鍵を突破したのならいずれもう1つも突破するはずである。しかしいくら時間が経過してもその様子はなかった。

誤作動にちがいない。そう思った。いやそう思うことにした。

仕事を終えたその日の夜、静かにドアを開けてみる。誰もいる気配はない。真っ暗ななか一も二もなく明かりをつけた。荒らされた様子はない。侵入された様子もない。朝と同じ状態だった。

結果的には誤作動だったということだろう。いやはや肝を冷やした。

 

迷える羊より

 

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