西俊輔の「毎日楽しく」

2018年8月号(Vol.156)

 先月は、会社には「成長」か「死」しかないという意見についてご紹介しましたが、「成長」の負の面を意識させるあるニュースが最近話題になりました。クロネコヤマトでおなじみのヤマトホールディングスの子会社による顧客への料金過大請求という問題です。法人向けの引越しを請け負うこの会社では2016年からの約2年間で2,000社を超える顧客に対して約17億円もの過大請求をしていたことが明らかになり、顧客に対してはもらい過ぎていた料金をすみやかに返金するとともに、外部の専門家で構成する調査委員会による原因究明と再発防止策を進めることも発表されたそうです。ただ、宅配がメインで売上高1兆円を超えるグループ全体からみるとわずかな売上しかないこの会社(といっても売上は数百億円もありますが)の問題が、今後、グループ全体の売上に影響する可能性も指摘されています。

  ヤマトは今から100年ほど前、トラック運送会社として東京の銀座でスタートしたのが始まりで、それから約60年、今から約40年前に社長に就任した小倉昌男さんが宅急便を始めたことが、現在の同社の発展のきっかけになったそうです。当時、低収益で悩んでいた同社では、手間がかかって採算が合わないと業界で言われていた小口荷物の配送に参入し、郵便局か国鉄に持ち込むしかなかった個人の小口荷物の宅配をたった11個の取り扱いからスタートさせて、いまや年間18億個以上を取り扱う事業に成長させました。

  と、ここまで聞くと華やかなサクセスストーリーですが、もちろん、その過程には数えきれないぐらいの問題があり、また多くの試練があったはずで、それは大企業になった現在でも続いていることが今回のニュースをみてもわかります。映画や小説とは違いますからハッピーエンドというものは存在せず、成長が止まれば大企業といえども死に向かっていくことになりかねませんし、うまくいってるときには世間からもてはやされますが、ひとたび今回のようなことが起きると、拡大路線のツケが露呈した、なんて批判を受けることになります。

成長の度合いは会社それぞれによって違いますから、常に成長を続けていても、上場するような大企業にまで成長する会社もあれば、そこまではいかない会社もあり、いずれにしても、「成長」か「死」しかないとすれば、生き残っていくためには常に成長を目指すしかありません。しかし、そのためには長期にわたって日々発生するさまざまな試練を乗り越えていくしかなく、つくづく、会社の経営というのは大変なものだということを、今回のニュースをみてあらためて感じました。

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