西俊輔の「毎日楽しく」

2019年2月号(Vol.162)

 日産自動車の前会長カルロス・ゴーンさんが逮捕されたのは昨年の11月でしたが、それ以来ずっと、テレビや新聞のニュースではこの話題がひんぱんに取り上げられ、日本国内はもちろん、世界でも話題になっています。勾留が長引くにつれ、話題は日本と欧米との司法制度の違いにまで波及して、しばらくは収まる気配がありません。本来は決算書で開示しなければならないゴーンさんの役員報酬を適切に開示してなかった、というのが当初の逮捕容疑でしたが、これについては多くの人が、そんな形式的な理由であのゴーンさんを逮捕しちゃうの? と思ったようです。ただ、検察当局のねらいはそこではなく、私的な支出なども会社に負担させて会社に損害を与えた特別背任のようだ、ということも途中からはわかってきましたが、最近の新聞記事などによれば、ルノーの大株主であるフランス政府が日産の経営への関与を強めて、日産の技術力や販売力までフランスのものにしようとしていることを、日本の省庁が阻止するためにゴーンさんを逮捕させたという、国による陰謀論まで出てきてますから、本当のところはわからないままで終わってしまうのかもしれません。意外だったのは、あるフランス人記者の意見で、ゴーンさんという人はフランス国内でもその報酬が高すぎるということで実はあまり人気がない、というものでした。フランスの会社経営者の報酬はアメリカとは違って、日本と同様、それほど高くはないそうで、ゴーンさんの報酬はフランスでも突出して高いそうです。フランス国内の富裕層向けに行われた増税を逃れるために、ゴーンさんが居住実態のないオランダに住所を移したのではないか、ということを報じたのもフランスのメディアだったそうですから、たしかに、あまり人気がある人ではないのかもしれません。

 キリスト教には7つの大罪という考え方があり、その一つに「強欲」というものがあるそうですが、どんな正当な理由があっても、4万人もの社員のリストラを行いながら、自身は高額過ぎると批判を浴びるような報酬を受け取ることは、日本人の感覚はもちろん、キリスト教的な価値観からも受け入れられるものではないのかもしれませんし、もしかしたら今回の逮捕では、そうした事情も原因のひとつになっているのかもしれませんね。

 経営者の考え方や行動に大変厳しいことで知られる京セラの稲盛和夫さんだったら、真相はどうあれ、おそらくはゴーンさんを厳しく叱責すると思うんですが、今回の事件ははたして、どういう結末になるんでしょうね?

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