2019年5月号(Vol.165)
日本中が注目していた平成の次の新しい元号は「令和」になりましたね。数十年に一度のイベントということで、弊社でも、ふだんは見ることのないテレビをつけて、そのとき事務所にいたメンバーで発表の瞬間を見てましたが、みなさんはどのように新元号を知りましたか? 元号とは別に、2024年には現在の紙幣のデザインが一新されるという発表も行われ、なんだか新しい時代の始まりとなる発表が続きました。
そんな新しい時代の始まりの陰で、生命保険業界では激震と言われる大きな「事件」がありました。事の始まりは今年の2月中旬、国税庁が生命保険会社の担当者を集めて伝えた、現在の保険契約の税務処理を見直すというものでした。ここ数年、保険料が全額経費となる一方、何年か契約を続けて保険料を払い続ければ、解約時には払い込んだ保険料の8割とか9割という金額が返戻金として戻ってくるという、解約前提の節税型保険がかなり売れていたそうです。保険料が経費になる結果、会社の利益は圧縮されて納める税金が少なくなるため、その節税効果まで考えると、実質的には払い込んだ保険料を超える金額を手にすることができました。言ってみれば、節税をしながら貯金をするような保険で、弊社でももちろん、興味のあるお客様にはおすすめしていました。ところが、解約時の返戻金があまりに高い保険については、支払う保険料の全額が経費となる取扱いを見直す、という国税庁の今回の「通達」によって、生命保険各社はこうした保険の販売を一斉に取りやめました。実は、国税当局と保険会社のこうした「いたちごっこ」はこれまでもずっと続いてきた歴史がありますが、ある国税庁幹部による、こうした「いたちごっこ」はもう解消したいという発言もあり、今後の動きを注視する必要性が高まっています。
古くは、不動産の価格が上がりつづけるという幻想がもたらしたバブル経済や、最近だと仮想通貨によるプチバブルなど、「そんなうまい話があるわけがない」とか、「そんなうまい話が長く続くわけがない」ということがいつの時代にもありますが、生命保険本来の「保障」という機能を逸脱したと言われていた節税型の保険も、そうした長くは続かないうまい話だったのかもしれません。新しい時代は、法令を遵守するコンプライアンスはもちろん、心の問題である「倫理観」も今まで以上に問われる時代になっていくのかもしれませんね。