西俊輔の「毎日楽しく」

社長の仕事は会社を存続させること|2020年8月号(Vo.180)

東京千代田区の神田神保町といえば、学生と古本の街として昔から有名なところですが、最近はカレーライスの街としても有名だそうで、現在、多くのカレー屋さんが軒を連ねるカレーの激戦地なんだそうです。

 

その神保町でカレーをメインとする飲食店として開業から60年になる老舗の「キッチン南海」というお店が今年の6月に閉店しました(神保町にお店を移してからは54年だったそうで)。閉店の理由は、お店が入る建物が築90年と老朽化したためと、テレビのインタビューを受けていた創業者の南山さん(南海さんではありません)の言葉によれば、ご自身も高齢になって腰痛がひどく、今回のコロナも閉店を考えるきっかけになったとのことでした。

 

南山さん、御年なんと90歳で建物と同い年! 私も東京で過ごした4年間の学生時代のうち、2年間ほど神保町界隈をうろうろしていたので、このキッチン南海にもよく行きましたし、今回のニュースには、今まで営業していたんだという意味でも驚きました。

 

現在の神保町のことはよくわかりませんが、当時はキッチン南海以外にも安くて美味しいお店がいっぱいありまして、天ぷらいもやとか天丼いもや、キッチンジローなんてお店を利用した方も多いのではないでしょうか。また、キッチン南海の閉店とは関係ありませんが、先日東京へ出張した際、モノレールの浜松町駅があるビルにあっていつも立ち寄っていた文教堂という本屋さんが閉店していたことにも驚きました。こちらはここで22年間も営業していたそうですが、閉店の理由はよくわかりません。

 

 北海道の地方都市で人口33万人の旭川に住む私から見ると、人口も街を歩く人の数も圧倒的に多い東京だと、飲食店にしろ小売店にしろ、競合店が多いとはいえ、旭川での商売よりもやりやすいだろうな、と思うことがよくあります。ライバルに負けないどれほどすごいテクニックを使っても、泳ぐ魚がそもそも少ないところで魚を釣るのは至難の業ですし、釣れる数にも限界がありますからね(とはいえ、東京でのビジネスの厳しさは弊社自身が充分味わっているところですが・・・)。

 

ただ、そんな東京でも、今回のコロナをきっかけに、長く営業してきた老舗のお店が閉店するという事例がけっこうあるようです。ビジネスを長くやっていると、自分たちの力ではどうすることもできない環境の変化というものが必ず起こる、と言われています。取引先や従業員を守るために、ビジネスを存続させることこそが社長の一番大事な仕事、という言葉が今ほど重みを持ったことは、ここしばらくの間なかったかもしれません。

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