西俊輔の「毎日楽しく」

才能は開花することが約束されてはいない|2020年9月号(Vo.181)

ここ最近、新型コロナウィルス感染症以外で話題になったことに、将棋の藤井聡太さんの活躍がありました。史上5人しかいない中学生でのプロ棋士となった後、プロでの連勝記録を更新し、史上最年少でタイトル獲得、史上最年少でのタイトル二冠獲得と史上最年少での八段昇格と、まだ18歳の高校生にしてこれまでの将棋の記録を軒並み塗り替える活躍で、将棋ファンはもちろん、将棋に興味のなかった人達まで注目する熱狂ぶりとなっています。

将棋がこれほど注目されたのは、現在もトップ棋士の一人として活躍する羽生善治さんが1996年にすべてのタイトル(当時は7つ)を獲得したとき以来と言われてるそうですが、今回の「藤井フィーバー」はその時を上回っていると、プロ棋士の方々も言ってるそうです。

あらたに将棋を始める人が増えていることに加え、小さいお子さんを持つ女性たちにも、「藤井少年はいったいどんな教育を受けてきたんだろう」といった興味を持つ人達が増えているんだそうです。こうした藤井さんの活躍が注目されることでやはりよく言われるようになっているのが、藤井さんの「天才」ぶりです。

ただ、この「天から与えられた才能」については、同じく中学生で将棋のプロ棋士となって、長い間、天才と言われてきた谷川浩司さんがこんなことを言ってます。「生まれ持った才能というのは、開花することが約束されているものではなく、長い期間にわたって情熱を失わず鍛錬を続けることで初めて開花するものであって、誰しも生まれながらの天才ではなかった」。

努力を苦にせず、鍛錬を蓄積できる人は、たとえ、生まれながらの才能に恵まれていなかったとしても、人が驚くような結果を生み出すことができるとも谷川さんは言ってますが、もちろん、これを聞いた私達は、情熱を持って鍛錬を続けられること自体が才能、なんてことを言ってはいけません(笑)。将棋の世界では、20代後半まで棋力(将棋の強さ)が伸び続けると言われてるそうですが、藤井さんが今後どこまで強くなっていくのか、将棋のことがほとんどわからない私も注目したいと思っています。

そんな「にわかファン」の私が今回注目していた方がもう一人いました。藤井さんが二冠目のタイトルを奪取する相手となってしまった木村一基さんです。初タイトルを獲得した46歳3か月という年齢は史上最年長の記録だそうですが、早熟の方々が多いトップ棋士の中でも、木村さんは屈指の苦労人です。お人柄のせいか、同業者を含めてファンが多く、私も今回の藤井さんとの対局では木村さんを応援していました。藤井さんとともに、「中年の星」の木村さんにもぜひご注目を。

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