西俊輔の「毎日楽しく」

2015年7月号 Vol.119

だいぶ以前のことですが、この「毎日楽しく」で北川八郎さんという方の「10%ぐらい損をして生きていく」という考え方を書いたことがあります。

そのとき書いたのは、私たちは日常生活の中でさまざまな選択をせまられ、そこでさまざまな意思決定をしますが、その際、多くの人は自分にとって損にならないよう、少しでも得をするような選択をしがちだという内容です。
でも、そこで自分がちょっとだけ損をするよう、他人には10%ほど良いものや良い思いを与え続けると、仕事が充実し、対人関係も良くなり、人生が充実するという北川さんの考えを書きました。

人間は他の動物と同様、自分を守るという自己防衛本能がありますから、自分にとって得になる選択をするというのは生物としての本能からいうと実は当たり前のことです。それは、大人に比べてより純粋に自己防衛本能を発揮する生き方(ある意味ではわがままな生き方)をする小さな子供や赤ん坊をみればあきらかです。

むしろ、他人のために損をするというほうが本能に反する生き方なので、これを実行するのはふつう困難です。でも、人間は他の人たちと一緒に生活する社会的な動物ですから、みんなが本能のままに生きたら大変なことになります。そこでほとんどの人たちは意識しているかしていないかにかかわらず、それぞれがちょっとづつがまんをして生きていくことになるわけです。

ただ、それはほとんどの人がやっていることなので、北川さんがあえてこのような話をしているのは、多くの人が日常行っている「がまん」程度では、10%ぐらいの損には足りないということなんでしょうね。

京セラ名誉会長の稲森和夫さんも、人生の目的は魂をみがくこと、という話をしています。自分本位の身勝手な生き方を少しづつでも改めていき、少しでも他人の役に立つよう、他人の利益を図って生きること、そしてそれによって生まれたときよりは少しでもましな人間になって死んでいくことこそが人生の目的というふうにおっしゃっています。

世の中の多くの人がこうした考え方にもとづいて実際に行動することができるようになれば、世の中はきっと今よりもっと素晴らしいものになるのでしょうね。そういう私自身も、なかなか実践できていないんですけど…。

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